リスクパリティファンドにとって2022年はすべて悪天候か?

リスクパリティ戦略は、多様な経済環境に耐えられるように、アセットクラス全体に亘るリスクバジェットによる分散化を前提としています。この目標は、過去40年以上経験したことのないインフレ環境と、成長の不確実性、評価への懐疑が相まって、再び挑戦されることになりました。

すべてのバランス・ポートフォリオの主要構成要素である株式と債券は、8月末時点でS&P500が-16%、ICE BofA Current 10年債指数が-12%と、ともに年初来で下落しています。グローバルインデックスも同様かそれ以下です。

では、このような環境の中で、リスクパリティは戦略としてどのような成果を上げてきたのでしょうか。一概には言えませんが、以下は、Bridgewater All Weather10% Tgt Vol ポートフォリオとその他著名なリスクパリティファンドの2022年当初8ヶ月間のパフォーマンスです。どれもプラス・リターンを達成していませんが、3ファンドは 60/40 [1]MSCI ACWI Index 60%、Bloomberg US Aggregate 40% 四半期ごとにリバランス ポートフォリオより損失が少なく、一方他の3ファンドはかなり多くの損失を出しました。

以前我々がレポートしたように、リスクパリティ戦略の運用方法は、互いに大きく異なる場合があります。それらは異なるリスクバジェット、リスクターゲット(したがって、レバレッジの度合い)、アセットクラスバケット、あるいはリスクの定義さえも異なる場合があります。しかし、今期は、通常の対ベンチマークでのパフォーマンスよりも、上位のファンドとそれ以外のファンドのパフォーマンスの格差が注目されます。

そこで、MPIのダイナミック・スタイル分析(DSA)を用いてファンドの行動を駆動していると思われるファクター・エクスポージャを定量的に分析評価することでその違いを明らかにすることができます。特に注目すべきは、TIPS(米国物価連動国債)やコモディティのような、インフレ環境下での保護を意図したアセットへのエクスポージャのレベルです。ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏は、長い間インフレの上昇に警告を発しており、我々の分析では、リスクパリティファンドのうち、インフレをヘッジすることを意図したアセットへのエクスポージャの推定が最も高かったことを示しています。また一部のファンドでは、インフレ対策のエクスポージャがほとんどないものも見受けられました。同様に、インプライド・レバレッジ(負のキャッシュ・エクスポージャ)も、ゼロから100%超までと幅がありました。

そして、今年に入ってから8ヶ月間、好調に推移したアセットクラスはコモディティだけで、インフレ防止を目的とするTIPSも、すべての国債と同様に金利上昇の悪影響を受けました。

そこで、下表の 2022 年の定量パフォーマンス要因を計算するにあたり、コモディティと TIPS (インフレ資産の2つの構成要素) を分けました [2]Invescoと S&P指数は、各ファンドの資料と指数の方法論によると、TIPS … Continue reading。結果は絶対値で見ると、パフォーマンスが良かったファンドは、ポートフォリオの残りの部分と比較してコモディティのエクスポージャが高かったか(Invesco、AQR、S&Pリスクパリティベンチマーク)、レバレッジが限られていたか(AQR、コロンビア、Invesco)、あるいはその両方であったことがわかります。

また、インプライド・レバレッジの影響が小さいことは意外に思われるかもしれません。借入コストを最小限の水準(TBills 3か月の水準)で想定していたとしても、それを数ポイント程度増加させても大きな変化がないことに留意する必要があります。しかし、レバレッジの実質的な影響は、債券や株式といったパフォーマンスの悪い資産に「投資」するための借入です。

この点を裏付けるために、以下のチャートは、それぞれのポートフォリオをグローバル 60/40 ベンチマーク(MSCI ACWI Index 60%、Bloomberg US Aggregate 40%)と比較した超過パフォーマンス要因として示しています。それぞれの寄与度は、ベンチマークに対する超過資産エクスポージャのウェイトとベンチマークに対する超過資産リターンの積として計算されます。このチャートは、パッシブ 60/40 ベンチマークに対する各資産のエクスポージャの過不足を評価するための「レンズ」となります。

これによると、コモディティへの投資は、直近の期間に損失を軽減する主な方法であったと思われます。しかし結果としては、すべてのリスクパリティファンド(およびリスクパリティベンチマーク)は、ディフェンシブなインフレ資産への何らかのエクスポージャを持ち、従来の 60/40 ベンチマークと比較して大幅に恩恵を受けたことがわかります。さらに、ファンドのアンダーパフォームまたはアウトパフォームは、インプライド・レバレッジの程度によることが分析により確認できました。この点で、Invescoのバランス・リスク・アロケーション・ファンドは明らかに限定的なレバレッジと大きなコモディティへのエクスポージャを備えており、今年のこれまでのところ勝者であるように思われます。

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脚注

脚注
1 MSCI ACWI Index 60%、Bloomberg US Aggregate 40% 四半期ごとにリバランス
2 Invescoと S&P指数は、各ファンドの資料と指数の方法論によると、TIPS への推定エクスポージャが少ないことを示しています。これはTIPSが債券と相関しており、ファクターモデルが月次データを使用すると 2つを区別するのに苦労する可能性があるためです。週次または日次のデータを使用して分析を行うと、TIPSエクスポージャは報告された配分にかなり近くなります。月次データを使用する主な理由は、Bridgewater All Weatherのリターンが月次でのみ入手可能であるためです