シリコンバレー・ショックによる市場破壊の可能性を考慮し、米国年金・大学基金のリスク特性をMPI Transparency Labで精査する

2022年度の公的年金と大学基金は(多くの公的年金と大学基金の決算は、7月から翌年の6月末)回復したかに見えますが、我々はシリコンバレー銀行の破綻に見られるようなデュレーションベットに起因するリスクの評価や、流動性の低いプライベート資産のマークダウンの可能性を測定することにもっと注力すべきであると考えます。

このような銀行危機のまっただ中で、公的年金と大学基金は思っている以上に多くのリスクを抱えています。

上のチャートが示すように公的年金基金の全体的なパフォーマンスはほぼ同じレベルですが、これらのリターンを達成するためのリスクは大きく異なります。

現在の市場環境を考えると、単にパフォーマンスだけ見るのではなく、ファンドが取るリスクに基づくパフォーマンス・コストを考慮することが重要であると考えます。プライベート市場への投資が今年度の年金パフォーマンスの足かせになりそうなことは分かっていますが、シリコンバレー銀行をめぐる問題は、ファンドマネージャーや投資家に、非流動性がパフォーマンスにどのように影響するかといった問題をより詳細に検討するよう促すはずです。

そこで、我々の分析のハブであるMPI Transparency Labで、公的年金と大学基金に関するパフォーマンスの初期予測のレポートを発表しました。

グローバル 60-40 ベンチマークの2022 年下半期のパフォーマンスは 0.2% でした。これは2022 年の第 3 四半期が -6% の損失で、2022 年第 4 四半期が 6.6% の利益となった結果です。この推移が多くの年金のパフォーマンス予測のベースとなります。しかし、個々の年金の資産配分の違いを考えると、振れの大きさも最終的な結果も様々です。

Transparency Lab のデータでは、ほとんどの公的年金と大学基金は、過去数年間、同様のパフォーマンスを示していますが、標準偏差で測定されるリスク許容度が大きく異なることがわかります。例えば、130 億ドルのコロンビア大学基金と 860 億ドルのノースカロライナ州教職員年金基金は、ヒストリカルではピアグループよりもパフォーマンスが低いことを示していますが、リスクではパフォーマンスの高い他の同業基金のほぼ半分を維持しています。

我々のレポートによると、年金のパフォーマンスが今後どのように推移するかの最大の変動要因は、プライベート市場へのエクスポージャであると予測できます。よって2022 年下半期(7月から12月)に最も低いパフォーマンスを予測できるのは、ワシントン州、オレゴン州、ペンシルベニア州の州職員年金です。興味深いことに、昨年度(2021年7月から2022年6月)この 3 つの年金はグループ内で最高のパフォーマンスを報告しました。実際、オレゴン州の職員年金は昨年度に6.3%の上昇を報告しましたが、他の同業年金のほとんどは5%以上下落し、同期間に10%以上下落したものさえありました。

この 3 つの年金グループの特徴は、プライベート資産への配分が大きいことです。年金が年次決算を報告するとき、通常プライベート資産の評価は前四半期のものを使用します。例えば、6 月決算のプライベート評価額は第 1 四半期です。この評価方法がこれら 3 つのファンドをトップに押し上げました。この間のマーケットは、Cambridge Associates Private Equity indexでは第 1 四半期のパフォーマンスが -0.35% で第 2 四半期は -5% でした。同時に S&P 500 インデックスの第 2 四半期のリターンは -16.1%と大きく下落しました。結果的に前年度の決算においてPEの第 2 四半期の -5%は決算に反映されずに、米国株の第 2 四半期の-16.1%は反映されたことがわかります。

このように、この 3 つの年金は、2022 年下半期(7月から12月)には、第 2 四半期のプライベートエクイティ -5% の前年度の損失を、今年度の数値にカウントしなおす必要があります。

慢性的な資金不足と情報開示の低下に悩まされている多くの米国年金において、関係者が関連するリスク・エクスポージャの詳細を入手することは、年々困難になっています。仮に情報が入手できたとしても、各機関が資産クラスやオルタナティブ投資のカテゴリーをどのように定義しているかはそれぞれ異なるため、同業者間の比較はほとんど不可能です。MPIのアプローチは、投資家間のアロケーションタイプを標準化し、比較のための共通分母を提供します。

この MPI Transparency Lab のデータは、年金のプライベートエクイティやベンチャーキャピタルへの投資がシリコンバレー銀行ショックの影響を強く受けることを考えると、特に重要になります。

Transparency Labがリリースされる前は、関係者が年金ポートフォリオの実際の市場リスクを比較および評価できる場所はありませんでした。我々は、多くの人々に市場の透明性を高めることでより良いサービスを提供できると信じております。そしてこの予測データは、投資家のパフォーマンス、リスク、およびスタイルに光を当てるための第一歩となります。

MPI のソフトウェアは、独自の技術と公開データソースを利用して、さまざまな投資の裏側を定量的にのぞき見し、他の方法では入手できない情報を提供します。 それらの情報レポートが集められたMPI Transparency Lab を使用すると、そのすべてのデータと分析が 1 か所にまとめられ一般に公開されるため、投資家、受益者、規制当局、研究者、ジャーナリスト、およびその他の関係者が不透明な投資家についての独自の洞察を得ることが可能となります。

MPI Transparency Labの登録ユーザーは、資産配分やエクスポージャーの傾向、最近および過去の結果の要因、リスク、ドローダウン、効率の推定、過去のストレステストの実行、さまざまな仮想シナリオの評価に役立つ分析レポート(MPI-360)を無償で閲覧やダウンロードができます。

この分析の特長は、独自のダイナミック・スタイル分析(DSA)と公開されている年次リターンを用いて、大規模な投資家ポートフォリオの資産エクスポージャーのダイナミクスをリバースエンジニアリングすることです。年金の運用成績が年1回しか報告されない場合、10年分の運用成績はわずか10点のデータで表されることになります。従来の回帰分析の静的手法やローリングウィンドウ手法では、このような頻度の低いデータから信頼性の高い洞察を得ることは困難でした。しかし、MPIのDSAはこのような限られたデータを処理するように独自に調整されています。

詳細については、MPI Transparency Lab にアクセスしてください。 ご質問などございましたらsupport@mpi-japan.comまでお問い合わせください。

MPIについて

Markov Processes International Inc. (MPI) は、グローバル・インベストメントおよびウェルスマネジ業界への投資調査、分析、および報告のためのソリューションの大手プロバイダーです。MPI は、年金および大学基金、ソブリンウェルスファンド、グローバルウェルスマネジメント会社、機関コンサルタント、規制当局、投資アドバイザー、資産運用会社など、200 以上のクライアントと連携しています。透明性、客観性、効率性の原則に根ざし、ファンド分析、リスク管理、資産配分、レポートの分野で皆様のお役に立てるツールを提供しています。

 

ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。

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