2022年大学基金物語: 強者はどのように倒れたのか

ウォール街では、昔から「最後の取引で勝負が決まる」と言われています。

今年は、大学基金全体にとって厳しい年度でした。特に、昨年のパフォーマンスが際立っていた基金にとってはより厳しいように見えます。2022年度の基金全体と比較してもパフォーマンスが悪いようです。具体的には、運用資産が246億ドルのMIT大学基金のリターンが-5.3%、133億ドルのコロンビア大学-7.6%65億ドルのブラウン大学-4.6%25億ドルのボウディン大学基金で-7.1%と、アイビーグループや他の大規模な大学基金のいずれと比較しても下位に位置しています。

なんと、強者たちはいかにして倒れたのでしょう。どのように転落したのでしょうか?そこが興味深いところです。

まず、忘れてはならないのは、これら大学基金では容易に損失を計上することは許されないということです。実際、MITの-5.3% のリターンは、すべての大学基金が大きな打撃を受けた世界的な金融危機以来の損失となりました。実質ドルベースでは、今年の損失は深刻だったようです。MIT の大学基金は 2021年度と比較して28億ドル減少し、コロンビア大学基金は10億ドル、ブラウン大学基金は5億ドルの価値を失いました。

ここ数年間、これら4大学のパフォーマンスが良好だっただけに、今年は厳しい1年となりました。ブラウン大学基金は、2021 年まで3年連続で最高の成績を収めた「アイビーリーグ」であり、10年ベースではトップの成績を収めたアイビーリーグになったことを思い出してください。我々の定量分析を通じて、過去のブラウン大学基金の優れたパフォーマンスは(意図的かどうかは別として)テクノロジーセクターへの集中に起因すると考えられました。ボウディン大学基金もまた、プライベート・エクイティが、好業績のVCに集中していため一貫した優れたリターンを生み出し、過去10年間ですべてのアイビーリーグを上回りました。

また、先にも述べたように、コロンビア大学は高評価のアイビーリーグのピアと比較して平凡なパフォーマンスした。これは、プライベートへの関心が低く、絶対リターンと伝統的な株式戦略に重点が置かれていたためです。しかしながら、昨年も引き続き良好な結果を報告することができました。

では、今年のパフォーマンスが低下した原因は何でしょうか? 答えは、トルストイの「アンナ・カレーニナ」の「幸福な家庭はみな同じであり、不幸な家庭はみなそれなりに不幸である」という言葉にそのまま表れています。以前のペンシルバニア大学イェール大学のレビューでも触れたように、すべての大学基金の「幸せな家庭」のパフォーマンスは同じところから来ています:大学基金はプライベート・エクイティ、ベンチャーキャピタル、実物資産、およびその他の非流動的な民間投資に投資することで、市場の大きな損失を乗り切ることができました。

下のチャートは、MPIが推定した2022年度のリターンに対するアセットクラスの寄与度を示しています。プラスの寄与度は PE であり、ほぼ同じ約2%です。例外はボウディン大学で、上昇率はわずか1%程度でした。我々のモデルによる推定では、彼らのポートフォリオの中でプライベートアセットのエクスポージャは、2022年度に大幅にアンダーパフォームしました。それは、ベンチャーキャピタル投資の中にセコイアなどのバイアウトが組み入れられているためです [1]ボウディン大学は「バイアウト、ベンチャー … Continue reading

「不幸な家庭」のマイナスのパフォーマンスは、当然ながら大学基金固有のものです。彼らは皆、自分たちの損失が自分たちのやり方から来ることを悟りました。

ブラウン大学はテクノロジーに重点を置いており、これがパフォーマンスを低下させる最大の要因となっています。一方、コロンビア大学は、エマージング市場の株式へのエクスポージャにより最大の推定損失を記録しました。MIT の「不幸」は、外国株とテクノロジーの組み合わせからきています。

また、ボウディン大学は、米国上場株へのエクスポージャが大きいことが問題でありました。その上、VCのエクスポージャが他の大学基金に比べるとバイアウトを中心としたプライベート投資へのウエイトが低かったため、損失をカバーできなかったようです。また、これに加えて不適切なマネージャの選択(Selection)もあり、結果はグループで 2 番目に悪いものになりました。チャートの中にあるセレクション(Selection)とは、リターンの説明のつかない部分をさします。大規模な基金では一般的にほぼゼロに近いものであのアルファによく似ています。しかし、運用資産が25億ドルのボウディン大学は大規模な大学基金ではありません。資産規模はグループ内で最小であり、マネージャの選択内容も明らかです。パフォーマンスは、プラスにしたいところですが、セコイアや一般的なVC インデックスと比較してパフォーマンスが低い類似ファンドへの集中投資によりパフォーマンスが低下した可能性があります。

8月の時点では、10億ドル以上の大規模な基金が2022年度に平均5.4%の損失で、国内の60-40ポートフォリオを5%近くアウトパフォームすると予測していました。結果としては、アイビーリーグのパフォーマンスは、同カテゴリーの平均的な基金か、それより若干低い程度で、依然として60-40ポートフォリオやほとんどの小規模基金をアウトパフォームしています。しかし、彼らが2021年度に達成した50%以上の桁外れのリターンのかなりの部分は、主にプライベート投資によってもたらされたものであり、したがって、まだ紙の上であり、時価評価されていないことを忘れてはなりません。我々は、今後2四半期にわたり、プライベート・アセットのベンチマークを注意深く観察し、グループの実質的なパフォーマンスをより良く把握する予定です。

我々の分析手法の詳細については、以前のリサーチをお読みください。

 

ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。

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脚注

脚注
1 ボウディン大学は「バイアウト、ベンチャー キャピタル、ディストレストクレジット戦略」を含む財務報告書のプライベート・エクイティへのアロケーションを単一の数字で提供しています