マイナスのアルファがどれほど悪いのでしょうか?

‐そのアクティブファンドはクローゼット・インデックスファンドですか?‐

Closet Index Fund(クローゼット・インデックスファンド)とは、アクティブ運用でありながら、ファンドの中身がベンチマークに酷似していて、実際にはインデックス運用またはそれに近い運用をしているファンドのことです。英語ではCloset Indexing、Index Huggingとも呼ばれます。

統計家が金融の世界について最初に気付くのは、一般的な統計が統計的有意性の示唆なしに頻繁に使われているということです。

運用報告書などの公式なレポートではアルファやベータ、さらには超過ベンチマークパフォーマンスなどがありますが、t値、p値、有意水準、または信頼区間のサポートが不足しています。よくても回帰決定係数の記載がありますが、それでも、自由度を考慮したF統計量が欠けていることがよくあります。特にこれらの要素を考慮しないと深刻な影響を与える可能性があり、統計家を困惑させてしまいます。

その好例は、運用資産24億ドルのAmerican Century Valueファンドです。このファンドは、彼らが「クローゼットインデクサー」として機能したと主張する集団訴訟の対象となっています。ファンドのパフォーマンスの低さ、特にベンチマークに対するマイナスのアルファは、 訴状の主要な議論の1つです。

具体的には、2018年10月から2021年9月までの3年間に基づいて、次のように述べられています:

  • ファンドの97%の決定係数は、「ファンドとそのベンチマークであるラッセル1000バリューインデックスとの関係の強さが非常に高いことを意味します。このような強い関係は、インベストメントアドバイザーの投資戦略がファンドのパフォーマンスにほとんどまたはまったく価値を加えていないことを示しています」
  • ファンドのマイナスのアルファ(期間中は-1.57%)は「インベストメントアドバイザーの投資戦略がファンドのパフォーマンスに何の価値も加えていないことをさらに示しています」

これらの数値は、モーニングスターのインベスターシェアにおいてAmerican Century Valueファンド(TWVLX)のリターンデータを使った我々の分析結果と一致しています。しかし、統計家なら誰でもわかるように、以下の表にリストされている標準的なものを含め、結論を引き出すために必要な追加のデータポイントがあります:

American Century Valueファンド

Alpha, %-1.46
Alpha t-stat-0.65
Alpha p-value, %52.22
Beta1.10
Beta t-stat34.06
Beta p-value, %0.00
R-Squared, %97.15

我々が算出したアルファ 1) 訴状と同様に、ファンドのベンチマークであるラッセル1000バリューインデックスに対してアルファ、ベータ、R2を計算します。と決定係数は訴状のものと似ています;違いはおそらく使用されている代替シェアクラス(またはリターンのその他の違い)、および場合によっては年率換算の方法(我々は算術を使用)の違いに起因します。

ただし、明らかなことは、アルファのt値(-0.65)とそのp値(52%)が示す数値と、その95%の信頼区間(-6.1%、3.1%)によると、アルファがゼロ(0)のファンドと統計的な有意差はないということです。これらの数値を見ている統計家は、この(一見、有意な!)アルファを完全にランダムであるとして棄却します。実際、10億ドル以上のAUMを持つファンドのピアグループでも、このファンドのランダムなアルファ 2) ゼロ付近で最も広い信頼区間を持つという意味です。 同時に、ファンドのベータ値1.1は非常に有意であり、ベータのt値は34、p値は1%未満です。これはファンドのリスクがベンチマークよりも高く、以前のブログのスタイル分析で発見した「インデックスハガー」ではないことを意味します。を確認できます。

以下の散布図では、グループ内の各ファンドについて、ファンドの年次アルファ(Y軸)とその統計的有意性p値(X軸)を示しています。p値が低いほど、ファンドのアルファはゼロ(0)とは異なる有意性があります。American Century Valueファンドは、アルファの有意性が最も低い値のグループの中で中位に表示されています。右側の影付きの領域にある6つのファンドが(3年間で)p値5%以下の水準で非常に有意なアルファを生成したことは注目に値します。つまり、3つのファンドではプラス、他の3つのファンドではマイナスです。

有意性が低い(p値5%以上)ということは、ファンドのリターンがベンチマークを中心にランダムに変動し、ある期間でアウトパフォームしたり、別の期間でアンダーパフォームしたりする可能性があることを意味します。これは、American Century Valueファンド(TWVLX)および上記のピアグループとベンチマークであるラッセル1000バリューインデックス(2021年9月現在)の期間別リターン(1年、2年、3年)を示す下のチャートで確認できます。ファンドは訴訟に至る翌年を起点とした3年間のパフォーマンスでは、ベンチマークをわずかに下回ったものの、1年間では、ピアグループとベンチマークをそれぞれ6%と7%上回っていました。

そして、2年間でも、ファンドの年次パフォーマンス(14.2%)は、グループのリターンの中央値(14.3%)とほぼ一致していたことは注目に値します。

また、上記の散布図の6つのグループから2つのファンドを比較対象として選び出しAmerican Century Valueファンドを調べました。1つは統計的に有意なマイナスのアルファを持ち、もう1つは統計的に有意なプラスのアルファを持ちます。下のチャートは、それら3つのファンドとベンチマーク(Russell 1000 Value Index)のローリング24か月パフォーマンスを示しています。

3つのファンドすべてがベンチマークの動きと類似している点に注目してください。参考までに、American Century Valueファンドは、ベンチマークに対する決定係数が他の2つのファンドほど高くないため、パターン内で他のファンドよりも大きく乖離しています。皮肉なことに、高い決定係数がAmerican Century Valueファンドに「クローゼットインデックス」とした訴状をもたらした1つでした。

同時に、一方のファンドは常にベンチマークを上回り、もう一方のファンドは一貫して年間約4%を「差し引いて」います(これは想像できる手数料を上回っています)。これをみると、これらのファンドはリスク管理をうまくやっているという意味ですべて「ハガー」であるかもしれませんが、明らかに1つのファンドは他のファンドに比べて懸念を残します。

コンプライアンス担当者、規制当局、弁護士–誰が統計値を使用するかに関係なく、信頼性の価値の重要性を理解することが重要です。そのため、完全で堅牢な定量分析を提唱しています。何といっても、統計値はスポーツや日々のワクチン/薬剤効果などに関するニュースで検証されています。なぜ人々は投資に同じように注意を払わないのでしょうか?

 

ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。

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脚注   [ + ]

1. 訴状と同様に、ファンドのベンチマークであるラッセル1000バリューインデックスに対してアルファ、ベータ、R2を計算します。
2. ゼロ付近で最も広い信頼区間を持つという意味です。 同時に、ファンドのベータ値1.1は非常に有意であり、ベータのt値は34、p値は1%未満です。これはファンドのリスクがベンチマークよりも高く、以前のブログのスタイル分析で発見した「インデックスハガー」ではないことを意味します。