PIMCOインカムファンドの最新情報

私たちは2019年にPIMCOインカムファンドのような複雑な債券ファンドを分析するリターンベースの分析フレームワークを発表しました。今回のレポートでは、前回と同様の手法をファンドに適用して、コロナ危機におけるファンドのパフォーマンスを評価し、ファンドが経験した損失を予測する際に私たちのモデルがどの程度うまく機能したかを確認します。

PIMCOインカムファンドは非常に複雑で、何千もの債券やデリバティブに投資しています。そのため、そのような激しい投資証券の動きを捉えることが非常に重要となります。この分析では、スタイラスプロで利用可能な最新の定量分析を使用して、ファンドのリターンから重要なリスクファクターを解析します。

コロナ危機と2020年の相対パフォーマンス

PIMCOインカムファンドは、コロナによる株式市場の急落により、2020年3月に-8%のリターンとなりました。下のチャートが示すように、2020年のファンドのトータルパフォーマンスは、モーニングスターのマルチセクターおよび中期コアプラス債券ファンドのピアグループの中で下位の四分位にランクされました 1)モーニングスターはPIMIXをマルチセクター債券ファンドとして分類していますが、この分析で使用したピアグループには2つのカテゴリーの組み合わせました:マルチセクター債券中期コアプラスのグループの中でファンドごとにシングルシェアクラスを選択し、少なくとも36か月のリターンを持つファンドを含みます。したがって、当社のランキングはモーニングスターが発行したものとは異なる可能性があります。ファンドの流出額は2020年3月だけで合計126億ドルであり、ファンドの損失と合わせて、ファンドの運用資産は1か月で1,370億ドルから1,170億ドルに減少しました。ただし、2021年2月の時点でファンドの運用資産は1,340億ドルと大幅に回復しており、モーニングスターは再びアナリストレーティングをゴールドにアップグレードしました。

PIMCOインカムファンドのスタイル

ファンドを分析するために、スタイラスプロで利用可能な動的スタイル分析(DSA)を使用しました。これは、従来のローリングウィンドウを使用した回帰分析では、特に非常時では相関ファクターを区別できないことがあるためです。そこで、昨年のPIMCOインカムファンドの分析と同じ一連のファクターを使用して、ファンドの月次リターンでDSA分析を行いました。下図はPIMCOインカムファンドとBloomberg Barclays Aggregate Bond Indexのファクターポートフォリオを比較したもので、色の違いは、債券のさまざまなエクスポージャの時間的変化をあらわすリスクファクターを示します。

PIMCOインカムファンドとそのベンチマークの構成内容には大きな違いがあります。一つは、ファンドがこれまでベンチマークよりも多くの非金利リスク(Non-agency MBS, Emg market, Municipals, Hight Yield, Asset backed, CMBC)をとってきたことです。そして、ファンドにはこれまで社債(Corporates)のエクスポージャはほとんどみられませんでしたが、ベンチマークは継続的に社債のエクスポージャがありました。また、PIMCOインカムファンドの金利(Interest Rates)エクスポージャは2013年以降減少傾向にありましたが、直近はわずかに上昇しています。日本債券においては永続的にショートポジションを持っているようです。

ファンドとベンチマークを明確な違いは、Non-agency MBS, Emg market, Municipals, Hight Yield, Asset backed, およびCMBSへのエクスポージャです。これらの各リスクファクターのエクスポージャは過去から変動していますが、エクスポージャは継続しています。しかし、これらのファクターエクスポージャ内で、2012年以降の顕著な変化は、Non-agency MBS,へのエクスポージャが減少し、Asset backedへのエクスポージャが増加していることです。

名目上のパフォーマンス

下図は、2011年以降のPIMCOインカムファンドとそのスタイルポートフォリオ、およびベンチマークのパフォーマンスを示しています。PIMCOファンドは、スタイルポートフォリオによって非常によく捉えられており、コロナショックによるマーケット急落期では、ベンチマークよりも極めて大きなドローダウンを示しています。スタイルポートフォリオの適合性は非常に高く、決定係数は95%、MPIの予測される決定係数では88%です。これは、ファンドの95%がスタイルポートフォリオによって「インサンプル」で説明され、88%が「アウトオブサンプル」で説明できることを意味します。

以前のリサーチレポートでも述べたように、ファンドの2018年までの並外れたパフォーマンスは、その戦略的要因であるNon-agency MBSのエクスポージャにより全て説明ができした。そして、ここでも、ファンドの2020年の損失とその後の目覚ましい回復の両方が、戦略の劇的な変化ではなく、同じファクターモデルにより起因していることがわかりました。以下では、この激しい起伏の原因となったリスク要因を特定します。

コロナショックのパフォーマンス

PIMCOインカムファンドの2020年2月から3月のパフォーマンスは、コロナの大流行が明らかになり、世界の株式市場の大幅な損失により-8.4%の減少となりました。そこで我々は、さまざまなファクターエクスポージャから成るファンドのトータルリターンの特性を説明するためにスタイルポートフォリオを使用しました。非常に注目に値するのは、ファンドの-8.4%に対して、スタイルポートフォリオの -8.3%は、ファンドが被った損失の大部分をスタイルポートフォリオで説明できることです。

要因分析によると、投資家が安全資産である国債へ退避し、利回りが低下したため、国債としての金利へのファンドのエクスポージャがリターンにプラスに貢献したことを示しています。コロナショックにより、リスクの高い債券とのスプレッドが増加したため、よりリスクの高い債券に対するエクスポージャがファンドのマイナスリターンに寄与しました。唯一の例外は、プラスのリターンに貢献をした日本債券ショートエクスポージャです。

コロナ回復

2020年2月と3月、中央銀行は、コロナによるマーケット混乱から経済的損失を食い止めるために刺激的な財政政策を迅速に行い、経済とマーケットの後押しを行い、世界の株式市場は劇的なリバウンドを示しました。PIMCOインカムファンドも力強い回復を見せ、2020年4月から2021年2月は14.5%のプラスリターンとなりました。

下図のパフォーマンス要因チャートは、コロナショック混乱時に観測されたものとは正反対の結果となりました。国債はリターンにマイナス寄与となり、他のリスク要因は コロナによる経済危機による損失が減少したことでスプレッドも元に戻りました。このように、ファンドのリターン(トータル–赤)の大部分がスタイルポートフォリオ(スタイル–青)により説明できることがわかります。

コロナ危機の非流動性

コロナ危機は、債券市場の非流動性と投資信託の流動性の低い債券へのエクスポージャがパフォーマンスにどのような影響を及ぼしたかを測定するための自然実験の場を提供しました。今回のPIMCOインカムファンドのリサーチでは、定量的な分析により債券市場における代表的な非流動性資産であるNon-agency MBSの保有推移を確認し、その方法が債券ポートフォリオの流動性リスクの測定に役立つことを示しました。

下図では、X軸にファンドの非流動資産のエクスポージャに基づく非流動性のランキングを示し、Y軸に2020年3月の各ファンドのパフォーマンスを示しています。2020年3月の非流動性の高いファンドと損失の大きいファンドには注目すべき傾向があることがわかります。PIMCOインカムファンドのパフォーマンスは、同分類の非流動性のファンドの中位でした。

このチャートにある2つの大きな外れ値は、Alpha Centric Income Opportunities FundBraddock Multi-Strategy Income Fundです。どちらも、このピアグループの他のファンドよりも著しい大きな損失を被りました。この2つのファンドが最も流動性の低いファンドの上位にあるという事実は、投資家が債券ファンドの流動性を定量的に監視する必要があることを示唆しています。また、前回のPIMCOインカムファンドのリサーチでは、ファンドのNon-agency MBSに対するエクスポージャが過去10年間で大幅に減少し、ピアグループの平均のレベルになったことが確認できました。もし流動性の低い債券のエクスポージャを過去と同じレベルで維持していれば、その損失は上記2つのファンドと同じ大きさであった可能性があります。

概要

PIMCOインカムファンドは、コロナパンデミックによって引き起こされた金融危機により、2020年の春に大きなドローダウンを経験しました。その結果、2020年のファンドのパフォーマンスはピアグループの最下位となりました。しかし、2021年のパフォーマンスは、ピアグループの上位4分の1まで戻り、モーニングスターのゴールドステータスに再びアップグレードされています。

リターンベースの定量分析を通じて、この期間のファンドの浮き沈みが、一定したエクスポージャとして存在した非流動性ファクターにより説明できることがわかりました。また、ベンチマーク対するパフォーマンスも同様に、非金利リスクへのエクスポージャがベンチマークに比べて大幅に高かったことが大きな損失からの力強い回復を生みました。

このようにリターンベースのファクター分析によるリスクエクスポージャを正確に特定することは、健全なファンドのパフォーマンス評価にとって不可欠です。

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脚注   [ + ]

1. モーニングスターはPIMIXをマルチセクター債券ファンドとして分類していますが、この分析で使用したピアグループには2つのカテゴリーの組み合わせました:マルチセクター債券中期コアプラスのグループの中でファンドごとにシングルシェアクラスを選択し、少なくとも36か月のリターンを持つファンドを含みます。したがって、当社のランキングはモーニングスターが発行したものとは異なる可能性があります