インフィニティQ:膨大すぎるアルファ

ボラティリティと衝撃:償還停止と計画された清算

Infinity Q Diversified AlphaIQDNXIQDAX
純資産18億ドルのプライベートエクイティの巨星

ファミリーオフィスでの投資からスタートしたリキッドオルタナティブ・マルチストラテジー戦略でまるでヘッジファンドのようなミューチュアルファンドは、運用業界に衝撃を与えました。それは、最近の金利上昇による保有債券の損失により、オルタナティブへの配分を検討し、ポートフォリオの簡素化や期待リターンの調整、オルタナティブマネージャーの運用プロセスの再検討を促す最新のエピソードです。

2月22日 SECは、Infinity Q Capital Managementがポートフォリオの18%を構成しているスワップやその他のデリバティブを評価するサードパーティの価格設定モデルのパラメーターを調整していたと公表しました。

Infinity Q Capital Managementは創設者兼CIOであるジェームズ ベリサリスが、プライベートエクイティ会社TPG Capital(大手トップ5の一つ)の共同創設者であるデービッド ボンダーマンが所有するファミリーオフィスであるWildcat Capital Managementから資金提供を受けて分離独立したもので、Infinity Q Diversified Alphaの戦略はWildcat Capital Managementが運用する投資戦略を外部投資家に提供するものでした。

インフィニティQは、ベリサリスがモデルにアクセスして変更したこと、および、これらの調整が合理的であると結論付けることができず、さらに、スワップについて以前に決定した値が公正価値を反映してないことを認めました。

警戒サイン

衝撃的な事実の中、警戒サインが点滅しました。ブルームバーグニュースによると、2020年12月、Infinity Q Diversified Alphaは、本年12月末に新規資金に対してのハードクローズを株主に通知しました。ファンドのキャパシティを考慮した場合ソフトクローズが一般的ですが、ハードクローズはまれです。

さらに、モーニングスターのグローバルマネージャーリサーチの責任者であるジェフリー・プタックは、監査の遅れが原因で、Infinity Q Diversified Alphaの年次報告書の提出に遅れがあることを指摘しました。それは、彼らの独立監査人BDOが2015年に「取引エラーが発生したときにファンドの管理者に通知する手順を含め、ファンドが取引の割り当てと取引の修正を適切に管理していないことに監査の実施中に気付き、この状況は、財務報告に対する内部統制の重大な弱点である」と述べていたことです。

掘り下げ

現在、調査は進行中ではありますが、調査によると、経営陣がサードパーティの価格設定モデルのパラメーターを調整していたため、Tier3(3軍)スワップ資産価値を決定していた期間を確認する必要があるようです。そのスワップはポートフォリオ全体の18%を占めていたと伝えられています。それゆえ、Infinity Q Diversifiedのリターンへの影響度合いと、今後、投資家が被る損失の程度は不明です。

まだ出現していないものがたくさんあり、現時点では不明なものもたくさんあります。しかしこのようなInfinity Q Diversified Alphaファンドのエピソードが私たちをよりインスパイアさせるのです。

Infinity Q Diversified Alphaファンドのトラックレコード

以下は、2020年9月のInfinity Q Diversified Alphaのプレゼン資料から抜粋したパフォーマンス実績です。Infinity Q Diversified Alphaファンドのシャープレシオ(リターン/リスク)は、Credit Suisse Hedge Fund IndexやCredit Suisse Global Macro Indexと同等のリスクでリターンが大幅に高く、どちらよりも優れていることが示されました。 これは、このようなプロダクトが持つ非常に魅力的な特徴です。

COVIDリターン

2020年の春にCOVID-19パンデミックが発生し、世界中の株式とヘッジファンドが大幅な下落を経験していたとき、Infinity Q Diversified Alphaファンドは正反対の動きをし、好調なプラスのリターンがでていました。ファンドのパフォーマンスをさらに調査すると、米国株が弱気相場で、ピークの-20%に近づいた2018年末にもプラスのリターンでした。この動きは、ポートフォリオの株式損失を相殺し、ポートフォリオ全体のリスクを軽減するのに役立つため、非常に望ましいものでした。

その他の望ましい特性

プレゼン資料では、S&P 500との低い相関とベータがそれぞれ-0.12と-0.06であるなど、投資家が求めている項目を満たしていることがわかります。資料によると、リスク管理は投資プロセスのすべてについて示しており、さまざまな戦略に10分の1パーセントまで正確に割り当てられています。Institutional Investorの記事では、インフィニティQの代表者が「損失を純資産価値の2%に制限する」と述べたというファンドの購入見込み客の話を引用しています。

保有分析

勤勉な受託者は、Infinity Q Diversified AlphaのSECに提出した四半期保有リストを参照できます。このリストによると、資産、負債、およびその他の金融商品のスケジュールが、レベル1、2、または3の資産に分類されています。

SECファイリングで説明されている、公正価格算出分類(レベル)別の要約:

 • レベル1:同一の資産又は負債の活発な市場における相場価格

 • レベル2:直接的または間接的に識別される資産または負債についてレベル1に含まれる相場価格以外の、観察可能なインプット

 • レベル3:観察可能な市場データに基づかない、資産又は負債のインプット

ファンドは明らかにレベル3の資産を保有していますが、貸借対照表の全資産の規模に比べるとはるかに小さいため、投資家はその存在に注意を払いません。 しかし、これは、レベル3の資産がもつ真のリスクを偽って伝えている可能性があります なぜなら、それらは株式や債券ではなくオプションやスワップで、そのペイオフは株式や債券とは劇的に異なる可能性があるからです。さらに、これらのレベル3の資産は定量的モデルを使用して評価されていることが多いため、モデルへの入力は主観的であり、モデルの入力を変更することで評価を大幅に変更することができます。 よって、私たちがみているバランスシートでは、評価が主観的でオプションとスワップの広範なポジションがあり、リスクを測定することが本質的に困難です。

スワップ、オプション、先物

Infinity Q Diversified Alphaの保有内容をより掘り下げるため、すべての分散スワップの位置を詳しく説明したページを追加しました。 分散スワップ契約と相関スワップ契約を調べると、同様の長いリストが存在します。 先物に関しては、原油、大豆、とうもろこし、牛、小麦、コーヒーなどの契約があります。

リスクの推定

ファンドの数百のポジションには、このように詳細な保有開示があっても、ファンドがリターンを達成するために過去どれだけのリスクをとっていたか、そして現在どれだけのリスクをとっているのかを判断することは非常に時間がかかり、困難です。 さらに、保有銘柄は定期的に変更されるため、ファンドとそのリスクをモニタリングするためには、このような分析を継続することが必要で、コストと時間がかかります。

ファクターアプローチ

しかし、Infinity Q Diversified Alphaの長い保有リストの代わりにリターンベースの分析を使用してファンドのトップダウンビューを取得することは可能です。 過去30年間、 投資家は、パフォーマンスをファンド会社から提供された情報と照合し、望ましくない隠れたエクスポージャを検出し、マネージャーのスキルまたはその欠如を評価するために、リターンベースのファクターまたはスタイル分析に頼ってきました。定量的なスタイル分析は、保有ベースと定性分析とともに、ファンドのデューデリジェンスの3つの柱の1つです。

スタイル分析によるトップダウンアプローチは、ファンドのリターンを最もよく説明する既知のリスクファクターの組み合わせを特定することを目的としています。この方法はまた、システマティックファクターのエクスポージャによって説明できないリターンを識別します。これは、しばしばセレクションリターンと呼ばれます。

オルタナティブのスタイル分析

Infinity Q Diversified Alphaファンドのようなマルチストラテジーのオルタナティブファンドに定量的ファクターアプローチを適用することは、株式と債券のみを保有する一般的なミューチュアルファンドよりも複雑です。 Infinity Q Diversified Alphaは、株式ロング/ショート、グローバルマクロ、グローバルアセットクラス全てに及ぶマネージドフューチャーやボラティリティ取引など、ヘッジファンドのような戦略の組み合わせを実装していました。

しかし、複雑なヘッジファンド戦略は、学術研究(Fischer et.al.(RFS 2016))と投資業界の両方で、ヘッジファンドトラッキングインデックスを使用し再現されています 1)過去6年以上にわたり、MPIのヘッジファンドインデックスは、同様の手法を使用してEurekahedge50、上位50のヘッジファンドのインデックスと最近では上位20のCTAのインデックス(すべてリキッドETFを含む)をうまくトラックしてきました。これによりリキッドオルタナティブファンドの究極の投資可能なベンチマークが作成されます。これにより、ヘッジファンドマネージャーの一般的なアイデアがダイナミックベータとして識別できることがわかりました。。そこで我々は Infinity Q Diversified Alphaを分析するために、 フィッシャー、ハノーアー、ハイガーモーザーの論文と同様のアプローチにより一般的なリスクとスタイルベースのファクターを使用し、またファンドのボラティリティ戦略のエクスポージャを把握するためにボラティリティファクターを追加しました。

DSA分析で使用される全てのファクターリスト:

株式

  • Broad Equity: Fama-French Excess Return on the Market
  • Equity Size: Fama-French Small minus Big
  • Equity Value: Fama-French High minus Low
  • Equity Momentum: Fama-French Momentum

債券

  • Broad Bond: Bloomberg Barclays U.S. Aggregate Bond
  • Credit Spread: Bloomberg Barclays U.S. Corporate Investment Grade – ICE BofAML US Treasury Index
  • High Yield Spread: Bloomberg Barclays U.S. High Yield Corporate Bond – ICE BofAML AAA US Corporate Index
  • Term Spread: ICE BofA 10+ Year US Treasury Index – ICE BofAML 1-3 Year US Treasury Index

カレンシーとコモディティ

  • Commodity: Bloomberg Commodity Index
  • Gold: Bloomberg Gold SubIndex
  • Currency: Deutsche Bank Long US Dollar Index

その他

  • Inflation: Bloomberg Barclays U.S. Tips – ICE BofAML US Treasury Index
  • Trend following: Credit Suisse Managed Futures Liquid TR
  • FX Carry: Russell Conscious Currency Carry TR
  • Emerging Equity: MSCI Emerging Markets
  • Volatility: CBOE Volatility Index

動的スタイル分析

Infinity Q Diversified Alphaファンドを定量的ファクターアプローチで分析するために、MPIスタイラスプロの独自のダイナミックスタイル分析(DSA)モデルを利用しました。 DSAを機械学習モデルで使用することで、多くのファクター/戦略エクスポージャの中からデータパターンの類似性を特定し、ファンドの月次リターンの予測力が最大化されファクターが選択されます。この動的なアプローチは、従来の回帰分析よりも迅速にスタイルシフトを識別できるという利点があり、レバレッジとデリバティブをより正確に処理できます。

DSAモデルにより選択された一連のファクターは以下のチャートで確認できます。それは、Infinity Q Diversified Alphaファンドが過去にエクスポージャを持っていたと推定するファクターを示し 2) ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。、 これをスタイルポートフォリオまたはファクタートラッキングポートフォリオと呼びます。

ファンド状況は、 四半期ごとのSEC保有レポートで報告されている数百のポジションすべてを、このわずかな動的 3)DSAは、従来のローリング回帰ウィンドウやカルマンフィルターのアプローチとは異なり、真の動的で分布を仮定しないモデルを使用して、これらの時間変化するファクターのエクスポージャをトラックします。ファクターエクスポージャに要約することができます。ファクターエクスポージャチャートに示されているように、時間の経過とともにInfinity Q Diversified Alphaのファクターエクスポージャに重要な変化がみられます。このDSA分析は、時間の経過に伴うファクターエクスポージャの変化を正確に検出し、レバレッジとショートのエクスポージャを捕捉できる精度がそなわっています。このようにデューデリジェンスの過程で行う定量ファクター分析はより高度なモデルが必要となります。しかし、従来のリターンベースのスタイル分析では、このような複雑な投資プロダクトを精緻に分析しタイムリーな情報を提供することが困難でした。

モデルの検証

このファクターモデルは、Infinity Q Diversified Alphaファンドのリターンの動きをどれほどうまく捉えているかを2つの統計値で定量的に説明しています。最初の統計値は、ファンドのリターンがファクターモデルによってどのくらい説明されているかを定量化するスタイル決定係数(R2)です。もう一つは、予測されるスタイル決定係数(PR2)です。これは、予測分析として、ファクターモデルが過去の各期間で発生した変化かをどれだけうまく予測できたかを示します。そして、予測されるリターン(過去の各期間のファクターエクスポージャを使用)と実際のリターンの差がPR2により定量化されます。この比較を行うために、「インサンプル」(R2)と「アウトオブサンプル」(PR2)が一般的に使用されます。また、MPIのPR2計算手法は機械学習にも使用されており、予測可能性を最大化するファクターのサブセットを選択するための最適化の一部として使用しています。この分析では、ファクターモデルがファンドの77.9%のリターン可変性(決定係数)を捉えましたが、予測される決定係数41.4%で、従来のミューチュアルファンドと比較すると低い値と考えられます。ただし、ヘッジファンドの戦略を組み込んだマルチストラテジーオルタナティブファンドであるInfinity Q Diversified Alphaの場合、戦略の複雑さを考えると、PR2の数値が低くなることは珍しくありません。

ファンド対モデル

下のチャートは、このファクターモデルを使用して、ファンドのリターンとスタイルポートフォリオ(ファクタートラッキングポートフォリオ)のリターンを比較したものです。スタイルポートフォリオは、ファンドと上昇と下降のタイミングと方向が概ね同じであることがわかります(モデル決定係数の結果から説明力は高い)。しかし、Infinity Q Diversified Alphaファンドのリターンは、モデルのシステマティックなファクターエクスポージャを大幅に上回っています。

この2つのリターンの差であるセレクション、またはアルファは、ファンドのリターンとモデルのリターンの差を示します。投資家は通常、高いセレクションに惹かれますが、統計的に有意なアルファ(ポジティブまたはネガティブ)は慎重に調査する必要があります。たとえば、著しいマイナスのセレクションは表にでてきていないフィーや費用を示す可能性がありますが、著しいプラスのセレクションは、正当なマネージャースキルを意味する可能性もありますが、欠落したファクター、NAV操作等(悪名高いマンハッタンファンドの場合のように)も考えられます。

しかし、Infinity Q Diversified Alphaの場合、DSA分析によると、過去6年以上にわたるファンドのリターンの大部分は、定量的に説明できません。

モデル化されたファクタートラッキングポートフォリオはファンドのリターンと同じパターンではありますが、ゼロ付近で変動します。しかし、ファンドは大幅なプラスのリターンを生み出し続けます。それは充分理にかなった事実かもしれませんが、ファンドと同じピアグループと比較して大幅なプラスのアルファがある場合、それは潜在的な危険信号であると考えます。

ファクターエクスポージャと要因分析

私たちの分析によると、ファンドのロングエクスポージャーで最も顕著なものは、株式モメンタム、新興株式、VIX中期の3つであり、最も顕著なショートエクスポージャは、株式バリュー、タームスプレッド、コモディティでした。ファンドの運用期間中、トータルリターンに対して、プラスのリターンに最も寄与したのは、株式バリューのショートエクスポージャで7.53%、株式モメンタムのロングポジションで5.01%でした。リターンの最大のマイナス要因は、タームスプレッドのショートのエクスポージャーで-6.75%、コモディティのショートポジションで-4.12%でした。

上のアトリビューション・チャートの異常なところは、ファクターエクスポージャが38.8%のトータルリターンにほとんど寄与しなかったことです。確かに、このファンドが非線形リターンであるオプションやスワップなどの取引を多用したという事実は、この説明のつかないリターンの一部に寄与しました。これらの非線形要因を考慮しても、セレクション(説明のつかないリターン)は、ファンドのトータルリターンの36.63%のほぼすべてを構成していました。

セレクションリターン

ファンドの月次リターンとファクターポートフォリオでは説明できないリターン(セレクション)をプロットすることで、ファンドの明白なスキルに焦点を当てることができます。下のチャートからセレクションリターンは非常に均一で2018年以降、マイナスになる月が続くことは少ないことがわかります(下のチャートの黄色の網掛け部分) 4)ファンドのリターンは2.24%の手数料を差し引いたものです。これは過去2年間で、月次セレクションリターン(フィー控除前)が、マイナスのリターンなしで約0.18%高いことを意味します。

ファンドとそのファクターモデルのパフォーマンスを違う見方で表す下の累積セレクションリターンのチャート(緑線)を見ると月ごとに着実に上昇していることがわかります。ファクターモデルの定量分析に頑強な信頼を置いている場合、このようなセレクションリターンの持続的なプラスは、ファンドの報告書やその他に疑問を投げかけることになります。そして、ファンドの保有状況を確認すると、レベル3資産の存在が影を落とします。この影は資産の評価方法や価格管理の機会を経営陣に与えることを示し。そしてそれが永続的なプラスのセレクションリターンの源となる可能性をあらわします。

異常ファンドにフラグをたてる

MPIスタイラスのファンドモニタリング機能を使用することで、多数のファンドの継続的な定量的モニタリングが容易になります。そして、事前に警告が提供され、懸念事項が特定されます。従来、ミューチュアルファンドの投資家は、ベンチマークに対するトラッキングエラー、総リスク、スタイルドリフトなどに関心を持っています。しかし、ヘッジファンドやオルタナティブミューチュアルファンドの監視に最も関連する危険信号は、多くの場合、次の領域に焦点を当てています:

1.インプライドレバレッジ(モデルによって推定される)とインプライドレバレッジの変化

2.モデルの予測力と予測力の変化(例えば、うまく捉えられていたモデルが突然捉えられなくなった場合)

3.説明のつかないパフォーマンスと大きさ、および説明のつかないリターンの一貫性

ファンドとピアグループを定量的に比較することは、投資家にとってファンドのデューデリジェンスと継続的なモニタリングの重要なステップです。 そのため、次のステップとして、MPIのモニタリング機能にInfinity Q Diversified Alphaが属するマルチオルタナティブ(モーニングスター)ファンドユニバースにも上記の危険信号(フラグ)の一部を割り当てました。

Infinity Qの危険信号(フラグ)

以下のチャートは、Infinity Q Diversified Alphaの属するマルチオルタナティブのピアファンドを示し、各ファンドのAUM(Y軸)とレッドフラグの数(X軸)をプロットしています。 Infinity Q Diversified Alphaは最多の6つのフラグがあり、2つ以上のフラグをもつファンドのなかで最大のファンドでした。実際、Infinity Q Diversified Alphaは、マルチオルタナティブカテゴリーで6番目に大きなファンドであります。それは、おそらく設定来、株式市場のボラティリティとドローダウンの期間を通じて示された魅力的なリターンと資金調達力の証によるものと思われます。そして、マルチオルタナティブ全体で、危険信号(フラグ)の集中度が最も高かったのは、ファンドのファクターモデルのリターンで説明のつかないセレクションリターンでした。そこで重要なことは、定量的な分析により多くの危険信号を持つファンドには、それだけで、マネージャー側の不正行為を示すものではありませんが、その運用状況をよりよく理解するためにも追加のデューデリジェンスと調査を行う必要があることです。

外れ値の範囲

さらにファンドを調査したところ、説明できないパフォーマンスとその有意性の両方でピアグループと比較して最大であることがわかりました。一方、ファクターモデルの説明力(前掲チャートR2)の77.9%はピアグループの平均と同水準でした。以下のチャートが、モデルによって説明できないセレクションリターン(Y軸)とそのセレクションの有意性の指標であるt値(X軸)で、ファンドと同分類ファンド(ピアグループ)の分散を示しています。高いt値は、セレクションリターンがファクターエクスポージャから得られたものではなく、説明できないリターンであることを示します。

チャートの大きな外れ値を特定するために統計数値表を調べる必要はありません。t値が-2未満の、左下の象限にある、著しいマイナスのセレクションのファンドは、ファクターモデルの説明力(R2値)が高いと仮定すると、高いマネジメントフィーの影響であると考えられます。しかし、著しいプラスのセレクション(外れ値)を持つファンドは1つだけしかなく、しかもt値は3.6です。 これは、ファンドの年間リターンの約5% 5)すべてのファンドのリターンは手数料を差し引いたものです。Infinity Q Diversified Alphaの管理手数料が2%を超えていたことを考えると、ファンドの説明のつかないグロスリターンは、説明のつかないネットリターンの約5%よりも2%高い7%であったということです。が、ファクターモデルによってほとんど説明できないことを意味します。それでも、このファクターモデルは、ファンドの月毎の動き、コロナ危機期の並外れたパフォーマンスの説明には非常に役立ちました。

結論

Infinity Q Diversified Alphaの過去からのパフォーマンスは、目をみはるものでした。それはポートフォリオにオルタナティブを配分する投資家の要望を満たしていました。たとえば、平時でのパフォーマンスは、ボラティリティがほとんどなく、株式や債券などのコア資産クラスとの相関もほとんどなく、プラスのリターン。そして、市場の混乱やドローダウン期間でも安定したプラスのパフォーマンスなどです。Infinity Q Diversified Alphaは、プライベートエクイティのファミリーオフィスを起源とするヘッジファンド戦略とポートフォリオ運用チームの経歴があります。 そのような戦略をミューチュアルファンドの形にしたファンドは、アドバイザーの日々の流動性ニーズを満たし、法外な成功報酬に対する欲求を低下させました(それでもInfinity Q Diversified Alphaは、ヘッジファンドの標準である2%を超えるマネジメントフィーを請求していた)。

ファンドの戦略は多面的で複雑であり、不可解で広範囲にわたる保有銘柄が報告されていました。 このファンドの保有分析は、SECに報告されたスワップ、オプション、先物を含む数百の難解な金融商品を考えると、経験豊富なアナリストにとっても非常に困難でした。

トップダウンアプローチの精緻な定量モデル(DSA)を使用すると、時間の経過とともにInfinity Q Diversified Alphaのリターンの動きに寄与したと思われるファクターエクスポージャの一部を特定することができます。 さらに重要なことは、ファンドのセレクションリターンを分離して、それがどれほど一貫してポジティブであったかを確認できます。このようなポジティブな一貫性は、持続的なスキルとセレクションの評価となる可能性もありますが、通常は定量的な危険信号として、さらに注意を払う必要があります。 もちろん、定量モデル(DSA)の有効性に関しては常にセレクション(アルファ)を確認して、重要なファクターが省略されていないこと、または単純に適切にキャプチャーできているかを確認する必要があります。これらの定量的な結果を確認すると、多くのアドバイザーやアナリストは「このパフォーマンスはあまりにも良すぎて真実ではないのか」と疑問に思うでしょう。そこで、私たちの提案する定量的監視フレームワークを使用することで、Infinity Q Diversified Alphaが真の外れ値であり、同規模の他のピアファンドよりも多くのフラグを立てていることを確認できます。

現在、SECの調査が進行中です。最終的には、不正があったのか、それがリターンにどのような影響を及ぼしたのかは不明ですが、NAVが確定されれば投資家が直面する損失の範囲がわかります。 ファンドは清算し、投資家に償還すると発表されました。 しかし我々の定量分析によると、大幅な一貫した“説明のつかないリターン”が存在しています。

現在ファンドに投資している人々は、被害を被ったことは自覚していますが、それが引き起こした損害についてはまだ気づいていません。 他にもシステマティックファクターによって充分な説明がされているようにみえ、時間の経過とともに一貫性のあるアルファを過度に提供しているファンドがあります。受託者やアセットオーナーは、特に複雑なオルタナティブ投資カテゴリーにおいて、パフォーマンスの異常と隠れたリスクを迅速かつ正確に特定するために、より優れた定量的ソリューションを模索し続ける必要があります。 このような特異なファンドの特徴は、そのパフォーマンスが最初に示されたほど優れていない可能性があるからです。

MPIスタイラスプロは、投資家に複雑なマルチストラテジーのリキッドオルタナティブやヘッジファンドのパフォーマンスの異常を特定し、さらにそのファンドを調査し、そのファンドを投資対象からはずす判断のできる支援ツールを提供します。

リキッドオルタナティブの運用会社、その最高リスク責任者、およびファンドボードにとって、Infinity Q Diversified Alphaは、悪名高いThird Avenue Focused Credit Fundと並んで、教訓として役立つかもしれません(非常に特異な例ですが)。

1940年制定された「投資会社法」のように、ファンドスポンサーは、「デリバティブルール」(SEC:2020年)を今後12か月間で遵守しようとしています。それにより、純資産の10%以上をデリバティブで運用するファンドは、標準化されたリスク管理フレームワークを確立し、デリバティブリスクマネージャーを任命する必要があります。Infinity Q Diversified Alphaの事例は、ファンドマネージャー、リスクオフィサー、ファンド受託者にとって新たな学習機会になるかもしれません。

40年間に及ぶ債券強気相場のコンセンサスの形成は過去のものかもしれません。 Infinity Q Diversified Alphaのケースは、潜在的に新しい体制でポートフォリオ分散とショックアブソーバーを探しているアドバイザーと投資家に特に関係があり、 リターンの期待に応えるためのソリューションとして、ヘッジファンドやオルタナティブミューチュアルファンドをますます検討するようになっています。

付属文書

上記の分析は、Infinity Q Diversified Alphaファンドがその資産の真のNAVを算出しているときに実行しました。その後、Infinity Q’s Diversified Alphaファンドの評価に関する詳細が明らかになりました。ファンドの投資家に情報を普及させるウェブサイトが開設され、2021年3月26日更新の最新のディスクロージャーは次のように述べられています:

2021年2月18日、ファンドが純資産価値(NAV)を計算した最終日、 ファンドの純資産価値は1,727,194,948.50ドルでした。 3月25日現在の純資産価値(NAVの計算に必要な負債およびその他の控除を考慮する前)は、1,249,485,022ドルです。

注目すべきことに、我々の分析では、ファクターモデルでは説明できないリターンが特定できたことで、ファクターモデルとファンドのパフォーマンスとの間に大きなギャップが生じました。 このギャップは、償還の停止を引き起こしたとされる価格操作の結果である可能性があります。

NAVが修正報告され2021年2月のリターン-27.7%を組み込んだ場合、ファンドの調整後リターンは、下のグラフに示すように、ファクタートラッキングポートフォリオ(青い線)のレベルまで明確に低下しました。 これは、我々のファクターモデルが、疑わしい操作が行われる前から、ファンドの真のNAVを表している可能性が高いことを意味します。

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脚注   [ + ]

1. 過去6年以上にわたり、MPIのヘッジファンドインデックスは、同様の手法を使用してEurekahedge50、上位50のヘッジファンドのインデックスと最近では上位20のCTAのインデックス(すべてリキッドETFを含む)をうまくトラックしてきました。これによりリキッドオルタナティブファンドの究極の投資可能なベンチマークが作成されます。これにより、ヘッジファンドマネージャーの一般的なアイデアがダイナミックベータとして識別できることがわかりました。
2. ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。
3. DSAは、従来のローリング回帰ウィンドウやカルマンフィルターのアプローチとは異なり、真の動的で分布を仮定しないモデルを使用して、これらの時間変化するファクターのエクスポージャをトラックします。
4. ファンドのリターンは2.24%の手数料を差し引いたものです。これは過去2年間で、月次セレクションリターン(フィー控除前)が、マイナスのリターンなしで約0.18%高いことを意味します。
5. すべてのファンドのリターンは手数料を差し引いたものです。Infinity Q Diversified Alphaの管理手数料が2%を超えていたことを考えると、ファンドの説明のつかないグロスリターンは、説明のつかないネットリターンの約5%よりも2%高い7%であったということです。