ブラウン大学はどうやって2年連続でアウトパフォームしたか

ブラウン大学は2年連続で、他のすべてのアイビーリーグの大学基金チームを大幅に上回り、2020年6月30日終了の会計年度(FY20)で12.1%の収益を上げ、大学基金の資産額は史上最高の47億ドルに達しました。ダートマス大学は、7.6%で2番目のパフォーマンスですがブラウン大学には大差をつけられました。注目に値するのは、8つのアイビーリーグ大学のうちブラウン大学だけが2年連続で伝統的な「60/40ポートフォリオ」(株式60%、債券40%)を上回った唯一の大学であったことです 1)S&P500 IndexとBloombergBarclays U.S. Aggregate Bond Indexを使用した国内60/40ポートフォリオの19年度の9.9%と20年度の8.8%のリターンは、四半期ごとにリバランスし計算しました。以前のレポートの一部では、日次リバランスされた60/40を使用しておりが、パフォーマンスの違いはごくわずかです。以前に説明したように大学基金の平均、さらには年金基金のポートフォリオの構成は、米国の公的株式や債券とは大きく異なることがありますが、それは、アイビーリーグまたはイェール基金モデルの複雑さ、非流動性、及びより高いコストと比較して、単純で流動性があり、低コストで多様なモデルで測定を提供します。

2019-2020年度のブラウン大学の卓越したパフォーマンスは、10年リターンも上位に押し上げました。10年リターンは2020年6月末現在年率10.2%でイェール大学(10.9%)、プリンストン大学(10.6%)、ダートマス大学(10.2%)と共に国内の「60/40ポートフォリオ」(10.1%)を上回っています。

ブラウン大学のパフォーマンス要因をコンサルタントや業界の専門家は、プライベート投資への過大な配分であると考えていますが、同じようにプライベートアセットに配分している他のアイビーリーグよりはるかに優れている理由を十分に説明していません。たとえば、20年度の財務諸表によると、ブラウン大学のプライベートエクイティとベンチャーキャピタルへの配分は合計31.2%で、「大学基金モデル」の「生みの親」であるイェール大学は、41%の目標配分です。しかし収益は、過去2年間でブラウン大学の半分以下でした 2)2019-2020会計年度の2年間のコンパウンドリターン:イェール大学12.9%、ブラウン大学26.0%。基本的に、両方の大学基金の資産配分は非常に似ており、エクイティに重点が置かれていますが(下の表を参照)、結果はまったく異なります。

  Table 1.ブラウン大学 vs. イェール大学:2020会計年度資産配分

Asset Class ブラウン大学 (%) イェール大学 (target, %)
Cash and Fixed Income 9.0 7.5
Equities 20.0 14.0
Real assets 4.7 14.0
Venture Capital 17.8 23.5
Private Equity 13.4 17.5
Absolute return 35.0 23.5

最近のWSJの記事では、CIOのJane Dietze氏(この役職は以前Joseph Dowling氏が担っていました)が率いる経営陣が、才能のあるヘッジファンドマネージャーを採用するという大胆な決定を下し、その結果30%~50%の一貫したパフォーマンスを獲得したヘッジファンドの逸話的な例を紹介しています。プレスリリースで、Dietze氏は、ポートフォリオのパフォーマンス結果を「金融市場の歴史的なボラティリティに直面して集合的に測定された判断を実行した外部投資マネージャーの優れたグループ」に起因するとしています。

しかしながら、このような解説は投資チームとファンドマネージャーに対する世辞でしかありません。パフォーマンス要因、ファクターベータ、マージナルリスク、コンポーネントリスクなどのハードナンバーに慣れているパフォーマンスおよびリスクの専門家にとってはあまり意味がありません。ここで尋ねる質問は次のとおりです:年率リターンが入手可能な唯一の大学基金データであるとすれば、才能のあるヘッジファンドマネージャーの多様なグループの「集合的に測定された判断」を客観的に測定する方法はありますか?

過去5年間、MPIのリサーチチームは年率リターンに隠された大学基金のパフォーマンスの手がかりを見つけるという困難な作業に着手してきました。そのために、90年代初頭にノーベル賞を受賞したウィリアムF.シャープ教授が開発したリターンベースの手法を使い、数年間にわたりヘッジファンド、トータルリターン債券ファンド、アンコンストレインド債券ファンドなどの複雑なアービトラージ戦略にまで分析の範囲を拡張させました。その結果、不透明で秘密主義の投資商品を分析可能とし、投資家と規制当局の両方で採用されるようになりました。この独自の手法(動的スタイル分析、DSA)の主な利点は、まばらな年次データなど期間の短い時系列データでも非常にうまく捉えることです。

19年度のアイビーリーグ大学基金レポートでは、一連の一般的なプライベートおよびパブリックベンチマークインデックスを使用して、大学基金それぞれの幅広い分散の結果を解読しました。まるで巨大な分散投資のプール(年金基金など)のような大規模大学基金では、資産配分が支配的なシェアで行われ、資産分散の実例がみて取れました。そして、それらのリターンの一部にはモデルエラーを含む「セレクション」と呼ばれる説明できない要素を含んでいます。私たちの分析に基づくと、昨年度のブラウン大学のセレクションリターン(幅広い包括的な資産クラスのベンチマークでは説明できない部分)は重要であり、アイビーリーグの中で唯一正の値として注目しました。20年度も同じ一連のアセットクラスのベンチマークを適用しましたが、再び大幅なセレクションリターンが見られました。通常、我々のアナリストはモデルで説明できない大きなリターンの出現を望みません。無名のヘッジファンドにとっては多くの興味深いことを意味する可能性がありますが、分散型の50億ドルの投資プールにとっては、モデルに重要なファクターが欠けていることを示しています。

不足しているファクターを探すために、私たちは最初に年次基金報告書と監査済み財務諸表に目を向けました。ブラウン大学の10年間の資産配分を下のグラフにまとめています。

それによると、絶対リターン戦略(Absolute Return)が大学基金のポートフォリオの多くを占め、さらに、絶対リターンセグメントの大部分は、株式ロングショートのヘッジファンドにより割り当てられています。それは、2019年の年次報告書の「…大部分は、主に株式に焦点を当てたさまざまな市場エクスポージャで戦略を実行します」および「絶対リターンポートフォリオの約3分の1」は、特に株式マーケットニュートラル戦略に割り当てられます・・・からも明らかです。

ブラウン大学チームによる注目に値する投資例として、Atreides Management LP、Melvin Capital Management、Skye Global Managementに言及している、前述のWSJの記事に追加の手がかりがあります。投資会社のファンドの説明と13Fのファイリングを見ると、共通のテーマである「テクノロジー」が浮かび上がります。例えば、Atreidesのウェブサイトには「AtreidesManagement, LPは、プライベートエクイティ投資家の長期的な視点をグローステクノロジーおよび消費関連企業にもたらし、パブリックおよびプライベート市場全体に投資します」と記載されています。Skyeは、2020年第2四半期の時点でMSFT、FB、AMZN、GOOGを含む上位5つのロングポジションを持つロングショートのヘッジファンドです。ウィキペディアの記事によると、Melvin Capitalは「主にテクノロジー株と消費者株に投資している」とのことです。

テクノロジーのセクターは過去2年間驚異的な走りを見せてきました。 特に20年度は、S&P 500 Information Technology Indexのリターンは35.9%増加し、Cambridge Associatesのプライベートエクイティ(9%)およびベンチャーキャピタル(11.8%)をはるかに上回りました。

  アセットクラスベンチマーク

Asset Class Index
US Bonds Bloomberg Barclays U.S. Aggregate Bond
US Equity S&P 500 Index
Foreign Equity MSCI EAFE Index
Emerging Market Equity MSCI Emerging Markets Index
Real Estate Cambridge Associates Real Estate
Private Equity Cambridge Associates Private Equity
Venture Capital Cambridge Associates Venture Capital
Natural Resources Preqin Natural Resources Index
Hedge Funds HFR Fund Weighted Composite Index
Technology S&P500 Information Technology Index

すべての「ロング」がすべての「ショート」で相殺されたとき、ロングショートのヘッジファンドマネージャの安定したブラウン大学のパフォーマンスを説明でき、テクノロジーが隠されたファクターであると考えるのは非常に妥当です。

我々は、ブラウン大学基金のポートフォリオをMPIスタイラスプロの動的スタイル分析により一般的なアセットクラスベンチマーク(テクノロジーセクターインデックスを追加)でポートフォリオを模倣することを試みます。我々のモデルは拡張性があり、WSJの記事から収集した貴重な情報を追加で組み込むことができます。具体的には、ブラウン大学は他の大学基金ほど頻繁にポートフォリオのリバランスを行わないということです。これにより、最もパフォーマンスの高いセグメントが成長し、パフォーマンスが低いものは時間の経過とともに低下する可能性があります。(厳格な投資ガイドラインと視野を持つ年金基金の規律あるアプローチに対してモメンタムアプローチです)

以下に分析結果を示します。各色の帯は、アセットクラスのインデックスによりポートフォリオを模倣した過去からの推定ウェイトを表します。年率リターンを使った定量分析と財務諸表から公表されたウエイトを比較すると、VentureCapitalのエクスポージャ配分の急速な増加とReal Estateのエクスポージャの減少が捉えられ傾向の類似性を簡単に確認できます。同時に、我々の分析ではPrivate Equityの配分を過大評価し、Public Equity(Technology,Emerging Equity,Foreign Eqity,US Equity)を過小評価していましたが、両方を組み合わせた配分は、ほぼ同じです。

ヘッジファンドとテクノロジーのエクスポージャの合計が、財務諸表の絶対リターンの配分と非常に似ていることは容易に理解できます。我々の分析によると、テクノロジーへの推定エクスポージャ 3)S&P 500 Index(米国株式の代替として使用)などの他のインデックスには比例したテクノロジーの配分があるため、「過度のエクスポージャ」と言うべきでした。は過去3年間でほぼ倍増しました。これは他のセグメントのリターンより優位に立ちながら組織的に成長したというWSJで言及された特定の投資によって推進された可能性があります。

下のグラフは、ブラウン大学基金の累積パフォーマンスとDSAにより算出された「トラッカー」ポートフォリオの累積パフォーマンスを示しています。インデックスで構成されたポートフォリオは、大学基金のリターンを非常に厳密に複製し(インサンプルではありますが)、説明できない部分はわずかです。これは、前年に使用した一般的なモデルよりも大幅に改善されています。

トラッカーポートフォリオのトータルリターンに対する各アセットクラスの寄与度を分析することで、ブラウン大学がアウトパフォーマンスした要因を理解するのに役立ちます。以下のパフォーマンス要因チャートは、DSAによって特定されたアセットクラスのエクスポージャから推定されたトータルリターンの寄与度を示しています。過去2年間は、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、テクノロジーが大学基金のリターンを占め、セレクションはごくわずかでした。そして、2019年はブラウン大学にとって「プライベートアセットの年」でしたが、この20年度は明らかに「テクノロジーの年」でした。投資チームが知っているかにかかわらず、ハイテク株への大幅な過剰エクスポージャはマネージャーのスキルに関係なく、リスクチームにとって貴重な情報であります。

最後に、以下重要なポイントを示します:

 ・ブラウン大学の投資チームの最も秀でた運用会社の探求は、テクノロジーセクターへの過度のエクスポージャを生みだし、これまでのところ有利に働いた可能性は十分にあります。

 ・特にヘッジファンドでは、分散投資を過小評価しないでください。 ヘッジファンドのポートフォリオは通常、株式や伝統的資産運用のポートフォリオよりも速いタイミングで分散投資します。これは、ファンド間の反対売買が解消され、インデックスのような動きとリターンを得られるためです。

 ・重要な「アルファ」は多くの場合、よく知られている「スキル」ではなく、モデルの欠陥または欠落しているファクターを示している可能性があります。

 ・ポートフォリオのエクスポージャを特定する際のこのような精度が年次データを使用して達成できれば、プライベートアセットポートフォリオの四半期データとパブリック市場の資産ポートフォリオの月次/日次データを使用して、より大きな結果を達成できる可能性があります。

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脚注   [ + ]

1. S&P500 IndexとBloombergBarclays U.S. Aggregate Bond Indexを使用した国内60/40ポートフォリオの19年度の9.9%と20年度の8.8%のリターンは、四半期ごとにリバランスし計算しました。以前のレポートの一部では、日次リバランスされた60/40を使用しておりが、パフォーマンスの違いはごくわずかです。以前に説明したように大学基金の平均、さらには年金基金のポートフォリオの構成は、米国の公的株式や債券とは大きく異なることがありますが、それは、アイビーリーグまたはイェール基金モデルの複雑さ、非流動性、及びより高いコストと比較して、単純で流動性があり、低コストで多様なモデルで測定を提供します。
2. 2019-2020会計年度の2年間のコンパウンドリターン:イェール大学12.9%、ブラウン大学26.0%
3. S&P 500 Index(米国株式の代替として使用)などの他のインデックスには比例したテクノロジーの配分があるため、「過度のエクスポージャ」と言うべきでした。