アイビーリーグ2017年を測定する:大学基金のリターンは混乱の1年に

概要

・こんなことが起こっても不思議ではありませんが、今年の勝ち組とリターンをもたらしたファクターエクスポージャは明らかに通常のものとは違っていました。
・全体として、アイビーリーグは2016年度の期待外れの結果を覆し、すべてがプラスのリターンを記録し、ハーバード大学以外のすべてが60-40のポートフォリオを上回りました。(2009年以来でたった2回だけ)
・出遅れ銘柄はアウトパフォームし、値上がり銘柄は適度なリターンを更新しました。
・上場株式市場は堅調に推移し、プライベート・エクイティ市場のパフォーマンスを上回り、アイビーリーグ大学基金のリターンを押し上げました。
・ハーバード大学は、6年間で4回下位の成績に甘んじ、説明することのできない大幅なマイナスのリターンを発表しました(報道によると一部は、天然資源投資の大幅な評価損によるもの)。
・大学基金のハイリスク、ハイリターン・ポートフォリオのイェール・モデルへの移行である非流動性投資へのエクスポージャの増加は、2017年ではあまり効果をもたらさなかったようです。

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アイビーリーグ大学基金の資産

2017年7月現在、アイビーリーグの大学基金の運用資産は1255億6000万ドルで、大学や関連する基金の資産の24.38%を占めています [1]。 2017年度の最終数字は未定ですが、2016年の運用資産額を大学基金別で示したものが下の図です。

大学基金 2016年度運用資産額(10億ドル)
ハーバード大学 37.10
イェール大学 27.20
プリンストン大学 23.80
ペンシルバニア大学 12.20
コロンビア大学 10.00
コーネル大学 6.80
ダートマス大学 4.96
ブラウン大学 3.50

 
パフォーマンス

2016年度と全く対照的に、この1年は大部分の大学基金に好成績をもたらしました。実際ほぼすべてのアイビーリーグの大学基金は、唯一ハーバード大学を除き、大学基金がパフォーマンスを測定する一般的なベンチマークである60-40のポートフォリオを上回っています。過去10年間の平均では、コロンビア大学とプリンストン大学だけが60-40を上回っていました。

すべての大学基金は、1.65%のインフレ率を加味した後であっても、過去5%の配当をはるかに上回るリターンをあげています。ダートマス大学は、14.60%のリターンで他の残りのアイビーリーグを上回り、アイビーリーグで常にパフォーマンスのランキングの上位に位置しています。実際、過去5年で見るとダートマス大学だけではなく、イェール大学も同様に好成績を収めています。ペンシルベニア大学は、今年度はコースを逆転させ、14.30%のリターンのあげ、僅差で2位にランクされました。そしてハーバード大学は、2017年度は8.10%のリターンで、最下位に位置し6年間低迷を続けています。2011年から毎年上位3位にランクインしているイェール大学は、今年度は11.30%とまずまずのリターンを達成しました。

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パフォーマンス測定でみると、2017年度は珍しい年でした。これまでピアグループを下回っていたアイビーリーグの大学基金が今年はアウトパフォームしており、ブラウン大学とコーネル大学がその最も顕著な例となっています。両大学基金は今年、永遠のライバル、イェール大学とプリンストン大学を上回りました。今年の成績の大部分は、2016年第4四半期以降、顕著な上昇を見せている上場株のエクスポージャが増加したことによるものです。

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エクスポージャ

エクスポージャを捉えるため、我々はすべての大学基金に共通するファクターを用いて各大学基金の時系列リターンを分析します。これにより、各大学基金のファクターミミックポートフォリオを作成することができ、さらなるパフォーマンスの洞察が可能となります。表1は、我々がアイビーリーグの大学基金ポートフォリオの各資産クラスを表すために使用したファクターを示しています。

表1.アセットクラスごとのファクターとして使用するデータ [2]

アセットクラス ファクター
債券及び現金 Bloomberg Aggregate Bond
米国株式 S&P 500
外国先進国株式 MSCI EAFE*
新興国株式 MSCI Emerging Markets*
不動産 Cambridge Associates Real Estate
プライベートエクイティ Cambridge Associates Private Equity
ベンチャーキャピタル Cambridge Associates Venture Capital
天然資源 Bloomberg Commodity
ヘッジファンド Eurekahedge 50

*通貨ヘッジがないと仮定した米ドルベースのエクスポージャ

分析は、弊社独自のダイナミックスタイル分析(DSA)モデルを使用して行いました。DSAは、不透明または複雑な投資戦略、ファンドおよびプロダクトのより透明な見通しを提供する高度な(リターンベースの)定量分析モデルです。 [3]このモデルを用いて、2005年以降の大学基金のリターンを表1に示すファクターと比較しました。このチャートには、過去10年間のアイビーリーグの大学基金の資産クラスのエクスポージャが表示されています。

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我々のファクターミミックポートフォリオは、各大学基金のパフォーマンスの大部分を捉えることができます。以下のチャートは、ファクターミミックポートフォリオのリターンに対する大学基金の累積リターンを示しています。

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パフォーマンス要因

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プライベートエクイティへのエクスポージャは、2017年度の大学基金のパフォーマンスの中で最も大きな割合を占めていました。さらに、ヘッジファンド、米国株式、ベンチャーキャピタル、不動産、外国先進国株式および新興国市場は、大学基金のパフォーマンスにプラスに寄与しました。天然資源は、2017年度のパフォーマンスにマイナスの影響を与えた唯一の主要な資産エクスポージャでした。

2017年度は、すべての公開株がプライベートエクイティをアウトパフォームしました。米国株式は、2001年以来わずか5回しかプライベートエクイティを上回っておらず、先進国外国株式は6回、新興国株式は17年間のうち10回も上回っています。今年は3つすべてがプライベートエクイティをアウトパフォームしましたが、この10年間で2度目のことです。さらに、不動産およびベンチャーキャピタルは、公開市場よりも大幅に負けており、最も高い不動産エクスポージャを保有していたイェール大学、そしてベンチャーキャピタルのエクスポージャが最も高いプリンストン大学がアンダーパフォーマンスになっています。

構成された資産クラスのパフォーマンスの違いを見て、大学基金のこれらの資産クラスへのエクスポージャを考慮すると、2017年度のパフォーマンスが2016年度と大きく異なる理由は明白です。一般的に市場は過去12カ月にわたって好調でした。

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実際、債券とキャッシュを除くすべての資産クラスは、2016年度より2017年度に大幅に改善されました。最も大きかった違いは、外国株式で見ることができます。先進国外国株式のリターンは、2016年度より30.42%以上上昇し、新興国市場は35.81%以上上昇しました [4]。イェール大学は、これらの資産クラスに対して最も低いエクスポージャを示しています;ダートマス大学、ペンシルベニア大学そしてコロンビア大学(パフォーマンスが良かった3つの大学基金)は最も高いエクスポージャを示しています。

説明できないリターンの説明

我々のファクターモデルは、大学基金リターンの100%を捉えることはできません。その説明力は高いものの、我々の前回の分析で言及したように、また上記の累積チャートからもわかるように、毎年説明できないリターンが観察されます。これらの説明できないリターンは、プライベート投資の評価額の変動および調整や有価証券を構成するマネージャによる銘柄、セクター、国、スタイルおよび戦略のベットによるものである可能性があります。

今年はハーバード大学とイェール大学を除き、説明不能なリターンはほとんどプラスでしたが、資産配分以上の超過リターンを獲得するファンドの能力を示唆しています [5]。特にハーバード大学は、分析後で説明できないリターンが-2.9%と際立っています。ハーバード・マネジメント・カンパニーのCEO であるNarv Narvekar氏は、2017年度の報告書の中で、天然資源の評価損を含む、セカンダリーマーケットにおけるプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、不動産ファンドの売却、そして外部マネージャへの配分を増やしたことなど年度内にいくつかの内部変更をしたことを明らかにしました。

評価損が市場のパフォーマンスと関係のない大学基金のパフォーマンスに影響を及ぼし、説明できないネガティブなリターンとして捉えられることに注意することは重要です。また、今年度の他の大学基金の大幅なプラスのセレクションリターンが、特に非流動性投資の評価に対して同様の調整をしている場合、将来の懸念の原因になる可能性があることに注意することも重要です。

ファンドエクスポージャの変更(プライベートインベストメントへの動き)

イェール大学基金の運用者であるDavid Swensen氏によって提唱されたイェール・モデルは、大学基金の中で急速に普及しました。このモデルでは、非流動性プレミアムを得るために、非流動性と高リスク資産への投資を増加することが求められています。これらの投資用不動産は資産規模が大きく、大部分の機関投資家よりも投資期間が長いため、大学基金にとって維持されやすいものです。我々のエクスポージャの推移がわかるポートフォリオを使用して、投資ポートフォリオが時間の経過と共にどのように変化したか、特に非流動性のプライベートインベストメントに焦点を当てることができます。

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上記のチャートは、大学基金のプライベートインベストメント(プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、不動産およびヘッジファンド)のエクスポージャを示しています。2005年以降、ほとんどの大学基金がプライベートインベストメントのエクスポージャを高めていることがわかり、イェール・モデルが広く採用されていることがわかります。

結論

2017年度の大学基金のパフォーマンスは珍しい年でした。アイビーリーグの大学基金のリターンはすべてプラスで、2016年度の厳しい状況から回復しました。出遅れ銘柄はアウトパフォームし、値上がり銘柄は適度なリターンを更新しました。上場株式市場は大きく買われ、アイビーリーグ大学基金のリターンを押し上げました。長期的な傾向として、大学基金は非流動性投資へのエクスポージャを引き続き増加させ、ハイリスク、ハイリターンのポートフォリオであるイェール・モデルに近づいていることを示しています。

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  1. http://www.nacubo.org/Research/NACUBO-Commonfund_Study_of_Endowments.html []
  2. 我々は、2017年6月30日の四半期末の速報値のデータを使用し、前の四半期のNAVに比べて更新されたアクティブファンドの61%および米国ベンチャー・キャピタルの68%を表している []
  3. ディスクレーマー: MPIはパフォーマンスベースの分析を行っており、公開されているファンド情報以外の投資戦略のクオリティあるいはメリットに関してコメントは行いません。また当該ファンドの実際の投資戦略、ポジションあるいは保有情報を知ることを要求したり示唆するものではありません。
    この分析は、ファンドのリターンのみを使っており、実際の保有情報は反映しておりません。あらゆる定量分析に固有の分析と実際の保有、また/あるいはファンドによる投資決定との乖離が予想されます。本レポートは、MPIが信頼できると判断した情報源から入手した情報をもとに作成しておりますが、当該情報の正確性を保証するものではありません。情報提供を目的としたものであり、本ファンドの勧誘のために作成されたものではありません。 []
  4. 外国株式のリターンは、米ドルベースで、為替ヘッジを行わない。ドル為替インデックスはFY 2017に.5%下落し、通貨換算により小さな利益を示している []
  5. リターンの説明できない部分はノイズも含まれているので、慎重に評価する必要がある []