アイビーリーグ大学基金 2016年パフォーマンス評価

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1873年に開かれたハーバード、イェール、プリンストンによるアメリカンフットボールのルールを体系化するための会議は、後に「アイビーリーグ - 革命前の時代からの伝統をもつエリート8大学」として知られるスポーツ会議の始まりとなり、アメリカ人の気質や文化の形成に影響を与えました。これら8大学は大学基金の運用管理の先駆者となり、後世の人々に対し、教育遺産の確保という点で貢献しています。

2016年度のイェール大学の運用リターンはかつてないほどすばらしく、オータムクラシックの特徴を生み出しました。イェール大学にとって最大のライバル、ハーバード大学基金と比較すると、そのパフォーマンスはいっそう目を見張るものがあります。ハーバード大学は、不本意ながら20億ドルの基本財源が減少したことにより、大学の経営計画におけるファンディングの制限やハーバード・マネジメント・カンパニーの全ての投資戦略において、迅速な見直しの可能性があるとドリュー・ファウスト学長は述べています。

これらの事を受け、我々は、昨年我々が発表した大学基金の運用レポートに基づいて、2016年度のアイビーリーグの運用パフォーマンス(冒頭の棒グラフ)を詳細に、パフォーマンス要因の分析(次の図「Ivy League Endowments – Asset Class Exposures(DSA) – )を行いました。

パフォーマンス要因の分析にはスタイル分析が用いられ、この分析に使用する回帰ファクターの組み合わせ – 「ファクターマップ」 [1] – は、大学基金の一般的なエクスポージャと一致する、以下のインデックスで構成します:

Foreign Public Equity MSCI EAFE ND Index
U.S. Public Equity S&P 500 Index
Real Estate Cambridge Associates Real Estate Index
Non-public Equity Cambridge Associates US Private Equity Index, Cambridge Associates US Venture Capital Index [2]
Commodities/Real Assets Bloomberg Commodity Index
Bonds and Cash Barclays Aggregated Bond Index
Emerging Market Equities MSCI EM ND
Eurekahedge 50 Index [3]

                                                  
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上図(「Ivy League Endowments – Asset Class Exposures(DSA) -)で、我々は、アイビーリーグの大学基金のスタイルエクスポージャ(回帰ファクターを用いてスタイル分析し、全体を100%とした中で、各ファクターのウェイトが時系列にどのように変化するかが確認できます)を示しています。
ご注意いただきたいのですが、これは、実際の保有情報を表したものではなく、MPIの特許商品であるDSA分析を用いた結果を表しています。また、DSAとは、Dynamic Style Analysisのことで、リターンベースのスタイル分析結果を示すものです。

下図(「Ivy League Endowment Performance Attribution」)は、2016年度のパフォーマンス要因を表しています。これは、大学基金毎にパフォーマンス要因(得られたパフォーマンスの要因をスタイル分析から探り、ファクターエクスポージャ毎のウェイトを表します)と、ファクターエクスポージャに起因しないパフォーマンスを表すセレクションリターンから構成されています。

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近年のパフォーマンス結果を反芻すると、イェール大学の2016年度の最高のパフォーマンスは、4つのテーマに起因します:オルタナティブへの注目、アセットアロケーションの重要性、わずかなコモディティやコモディティ関連市場へのエクスポージャ、そしてマネージャセレクションから生じるポジティブなリターンです。事実、イェール大学は、8大学中最大のセレクションリターン-およそ0.6%-を持っています。

イェール大学が非公開投資(ヘッジファンド、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルおよび不動産)に比重を置いていることは、最も注目すべき特質の一つとも言えます。(「Private vs. Pubric Investment exposure」によれば、イエール大学、非公開投資89%、公開投資11%、ハーバード大学、非公開投資80%、公開投資20%。)先駆者の1人であるイェール大学基金でファンド・マネージャを勤めるDavid Swenson氏の最近の著作「イェール・モデル」によってオルタナティブ資産を重要視することの重要性が説かれ、普及し、幅広く採用されています。

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イェール大学の2016年度のアセットクラスのエクスポージャ(図「Index Performance」)を見ると、非公開投資ではヘッジファンドとベンチャーキャピタルよりプライベートエクイティと不動産(Real Estate)で大きなエクスポージャをとり、ピアグループと比較して、より有益にバランスが保たれました。イェール大学の明らかに小さい公開市場に対するエクスポージャの中では、コモディティや新興国株式と比べ米国株と債券がオーバーウェイトしました。

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2016年度の上記の図(アセットクラス毎のリターン(図「Index Performance」))が表す、イェール大学のパフォーマンスにおける、コモディティと新興国(Emerging Market)のエクスポージャの大幅なアンダーウェイトは、アウトパフォーマンスの主な要因でした。これらは、石油価格の下落、2016年度のコモディティ市場の暴落、大幅な前年比損失の原因となった政治的混乱にも耐えた新興国株式を引きずり降ろしました。これら2つのアセットクラスに最も大きなエクスポージャを示したハーバード大学とコーネル大学は、グループ内で最も低いパフォーマンスを記録しています。

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最後に、イェール大学の0.6%のセレクションリターン(セレクションリターンは、スタイル分析の結果、回帰ファクターで説明できないパフォーマンス要因を表し、マネージャの銘柄選択効果とも言われます。図「Ivy League Endowment Performance Attribution」の水色個所)について触れますが、これはプリンストン大学と共に、アイビーリーグ大学基金の運用スタイルの中で唯一説明できないパフォーマンス要因ですが、プラスを示しました。イェール大学は、アイビーリーグの中で最も高い年率セレクションリターンを記録し、特異なプラスのパフォーマンスを更新しました。

下の図で描かれる、プラスのセレクションリターンを示しているイェール大学は上手に外部マネージャの組み合わせの中から資産の配分に焦点を合わせたこと、対照的にマイナスのセレクションリターンを示しているハーバード大学は、外部マネージャへのアセットアロケーションに加え、個別銘柄の選定にリソースを集め、インハウスで370億ドルの大部分の基金を管理するハイブリッドシステムによって説明できるかもしれません。

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結論
大学基金のリターンは、2016年に大幅に落ち込みました。異なるクラスへのアセット配分は、年間の大学基金のパフォーマンス結果に大きく影響しました。コモディティ、グローバル株式、ヘッジファンドおよびベンチャーキャピタルによる下落により、多くの大学基金がマイナスのパフォーマンスを公表しました。セレクション – マネージャと銘柄の選択に関連するファンドのリターンの一部 –は、全体としてアイビーリーグのポートフォリオ間でプラスに貢献できませんでした。しかしながら、イェール大学は、問題の多いアセットクラスを回避し、非公開資産に注目することにより、すばらしいパフォーマンスを継続しました。

今回の分析では、アセットアロケーションの配分比率がパフォーマンスの結果に大きく影響を与えている事を再度確認できました。
尚、今回の分析では、比較的少ない公表データから集めた未加工の情報を用いています。

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  1. 私たちがわずか10のデータポイントしか持たないとすれば、ファクター数はそれより少なくなければなりません。この分析のために選ばれたファクターは、ポートフォリオ全体を通してよい高水準でアセットに基づいた見方を提示していると感じました。 []
  2. 第二の四半期リターンは暫定で、まだリターンは確定していません。 []
  3. Eurekahedge 50 Indexは、MPIとEurekahedgeが共同開発したインデックスで、ヘッジファンドユニバースの一般的な幅広い測定値よりも集中したヘッジファンドインデックスです。多様化しすぎたり、著しい戦略およびパフォーマンスの偏りを持っている他のすべてのヘッジファンドインデックスとは異なり、EH50は大型の機関レベルのヘッジファンドのみで構成されます。それは、トップのヘッジファンドの能力へアクセスを蓄積された、長年にわたったヘッジファンド投資プログラムの、大学基金プログラムのより適切なベンチマークです。今回の研究のために、2007年にEH50がローンチされる前の2004年から2006年の形式上のリターンデータでインデックスを拡張しました。 []