世界債券ファンドはFXというジェットコースターに乗っている

“世界債券”に分類されたファンド [1]で、 劇的な変化が起こりました:昨年ワーストパフォーマンスだったファンドが、今年はベストパフォーマンスとなったのです。これは、2015年と2016年(6月24日まで)のファンドのパフォーマンス・ランクを対比した下記チャートから明らかです。

Scatternoindicator

2015年にパフォーマンスが良好で2016年には悪化したファンドは、対角線より下側に位置し、対角線より上のファンドはその反対でした。そこで、我々はこのファンドの“パフォーマンスに関した奇妙な振る舞い”が何によって引き起こされたのかを掘り下げてみたいと思います。

そしてそれが、通貨エクスポージャーが潜在的な原因:”犯人“である可能性として

2015年の大幅なドル高(対ユーロ)は、ユーロにエクスポージャーのあるファンドへ為替からのダメージ(損失)を与え、2016年からのドル安は、同じファンドに為替から利益を得られるという逆の結果となりました。

DXY-Arrows

ファンドの要因分析において、通貨エクスポージャーを特定することは簡単な作業ではありません。とりわけ積極的に為替リスクをとるマネージャの取引内容は、通貨フォワード、先物、オプション等々、何千ものロングおよびショートのポジションが散見し、ヘッジの状況について正確な情報を得ることは困難です。しかしながら、この「混乱」を切り開く方法が1つあります。それは、リターン・ベースのアプローチを用いて「内包された為替エクスポージャー」を測定することにあります。その方法は、為替のダイナミックヘッジを含んだファンドのパフォーマンスを模倣するがごとくポートフォリオを複製することです。我々は、それを実証するために、モーニングスター・データベースから世界債券に分類された5本のファンドを選択し、2015年1月から2016年6月までの18か月(頻度:週次)の分析をMPI独自の動的スタイル分析モデル(DSA)を用いて行いました。選択したファンドは、平均20%以上の通貨エクスポージャーを示し、時価総額の大きい以下のファンドです:

manager-table

下図チャートは、DSAモデルによって分析されたトータル・エクスポージャーです。通貨エクスポージャー(EuroとGBP)は、100%の線より上に示されています。通貨配分が0%の場合は、外国通貨のエクスポージャーが完全にヘッジされることを意味し、100%以上の通貨配分は、外国通貨に対するエクスポージャーを示します 。すべてのファンドが2015年から2016年にかけて為替エクスポージャーを増加させていることに注目して下さい。この通貨エクスポージャーの違いが、どのようにファンドのパフォーマンスに影響を及ぼしたのでしょうか? 

CurrencyExposures

下記のチャートは、2015年のリターンの要因を示します。

2015PerformanceCurrency

2015年は、EuroとGBPの通貨エクスポージャーの高いファンドがパフォーマンスの足を引っ張り、マイナスに寄与したことがわかります。0以下で示されるエクスポージャーが、パフォーマンスのマイナス要因であり、0以上のエクスポージャー(TreasuriesとGlobal Govt. Ex USなど)がプラス要因です。5つのファンドの平均通貨エクスポージャーは43%を占めていました。2015年のパフォーマンスは平均 -2.93%で、その内2.876%の損失が通貨エクスポージャーによるものでした。

2016年前半、状況は逆転しました。年初からのパフォーマンスは平均7.03%で2.82%が通貨エクスポージャーによるものです。ユーロへの高いエクスポージャーは、通貨エクスポージャーを持たないファンドをアウトパフォームし、これらのファンドのパフォーマンスの改善に著しく貢献しました。

2016CurrencyPerformanceYTD

この情報を基に、再度ピアグループ全体で見て、通貨がどれだけの全体のファンドに影響したか確認することができます。次のチャートで20%以上通貨のエクスポージャーを持ったファンドを赤色で示します。

Scatterwithindicator

為替に影響を及ぼす大事件が、2016年6月23日の木曜日に起こりました;’Brexit’ として知られるイギリスの欧州連合からの離脱を決める国民投票です。その国民投票の結果、ドルに対する他通貨の損失が発生しました。我々は、リターン分析により為替のエクスポージャーを捉え、ファンドの為替変動による影響を分析することができます。

Return-Since-Brexit

上図(Y軸:通貨エクスポージャー、X軸:6月22日~24日、3日間のリターン)によると、いくつかのファンドはたった3日で2%下落し、最も高い通貨エクスポージャーを持ったファンドはこの下げの局面で大きな損失が出ました。

世界債券ファンドは、2016年6月24日に生じたBrexitにより大きな影響を受けました。しかし、投資がより少ないリスク資産に移動したことにより債券価格が上昇し、やや肯定的な結果を生みました。

また、2016年6月24日から2016年7月1日までの為替のリターンは、ユーロ-1.92%,GBP-10.41%で世界債券ファンドの平均リターンは0.70%でした。しかし、ユーロおよびGBPへ20%以上のエクスポージャーを示したファンドは、平均0.54%のリターンでした。

為替変動はしばしばファンドの損益の主な原因となります。したがって、通貨エクスポージャーおよびヘッジ政策を理解することは、ファンドのデュー・デリジェンスの必須部分でもあります。最近のドルの動きおよびBrexitの為替に対する影響は、為替損失の影響が決して過小評価されてはならないということを証明しています。

特記:今回の分析は、ファンドの通貨エクスポージャーに分析の主眼を置いたため、それ以外の重要な分析要件やファンドの固有の特質としてセレクション・リターン(残渣)には焦点を置きませんでした。

------------------
  1. ファンドデータのソース: モーニングスター []