年次リターンでトップの大学基金の収益の源泉を明らかにすることが出来るか?

秋になると、毎年注目される興奮と驚きにつつまれるコンテストの時期が訪れます。いえ、ワールドシリーズの話ではなく、大学基金の決算報告の話です。2015年度のリターン [1]がトップの大学基金の報告が入ってきました。それによれば、約14億ドルの運用資産を持つボウディン大学が今までのところトップの栄誉(14.4%)に輝き、基金最大規模のハーバード大学は5.8%のリターンを記録しました。今回はMPIの特許取得済DSA(ダイナミックスタイル分析)モデルを用いて、トップの大学基金を分析していきます。このモデルは、投資家向けのディスクロージャーが限定的な、複雑なファンド(例:ヘッジファンド)を評価するためのソリューションとなっています。この分析はトップの大学基金に対して他の方法では得られない知見を提供し、報告されるパフォーマンス結果の幅の要因を提示します。

各大学基金によるディスクロージャーは非常に限られており、通常年次パフォーマンス、ポートフォリオの見直し(特定の資産クラスや要因に対する割当の目標)、そして一般的なコメントで構成されています。大学基金がしばしば保守的なメディアポリシーを持っているのは、成長する大学基金への関心に応えることとそれに関わる収益源を保全することが、投資行動の完全な透明性と合致しないからです。多くのコンサルタント会社さえも、一流の大学基金の運用結果を説明するのに苦労します。イェール大学のCIOデービッド・スウェンセンら専門家により、多くの論文や書籍が投資向けの大学基金モデルについて書かれてきましたが、タクティカルアロケーションのシフトや戦略の選好、そして(ファンド)マネージャーの選択を理解したい人々には現状多くの情報を与えられていません。大学基金の世界は不透明さに包まれたままで、得られる知見のほとんどは想像の域を出ないものです。

年次パフォーマンスの数字のみが報告されている場合、10年分のパフォーマンスは10のデータポイントに代表されます。従来の回帰分析における静的、およびローリング・ウィンドウの方法で、このような頻度の低いデータから信じるに足る知見を見つけるのは大変です。しかし、MPIのダイナミックスタイル分析は、独自にそのような限定的なデータを扱うことが出来ます。DSAはウィリアム・シャープ博士によるRBSAアプローチを改善したもので、大学基金によって報告された資産クラスを示すファクターインデックスを用いて、彼らの投資行動に関して重要な知見を提供します。DSAは大学基金のパフォーマンスの推移における変化を説明することが出来、共通の分析の枠組みを用いて各大学基金間の違いを明示することが出来ます。

私達MPIの分析 [2]に使われる回帰ファクター、または「ファクターマップ」のセットは大学のエクスポージャーの一般化されたセットと対応する次の指数から構成されています:

Foreign Public Equity MSCI EAFE ND Index
U.S. Public Equity S&P 500 Index
Real Estate Cambridge Associates Real Estate Index
Non-public equity Cambridge Associates US Private Equity Index, Cambridge Associates US Venture Capital Index
Commodities/Real Assets Bloomberg Commodity Index
Fixed Income Barclays Aggregated Bond Index
Hedge Funds Eurekahedge 50 Index [3]

下のチャートでは、最大またはトップパフォーマンスの大学基金について(2005年7月から2015年6月までの間の年次リターンを用いて)、過去10年間にわたりDSAで捉えられたダイナミックファクターのエクスポージャーです:

Endowment_Exposures

DSAによって捉えられたエクスポージャーは、実際の大学基金のポジションとして解釈されるべきでなく、むしろ当該大学基金の投資行動が、報告された年次パフォーマンスに基づき私達の選んだファクターによってどのように適切に説明されるかと理解されるべきです。 [4]

年次報告書を考察することによって裏付けられたいくつかの注目すべき所見は:

  • 各大学基金の多く(50%-90%)のエクスポージャーを流動性が低めのプライベートエクイティ、不動産、ベンチャーキャピタル、そしてヘッジファンドなどのオルタナティブ資産が占めています。全ての大学基金が一貫して大きなエクスポージャーで推移しており、多くが増加しています(イェール大学、ハーバード大学、プリンストン大学、スタンフォード大学)。
  • ペンシルバニア大学、コロンビア大学、そしてボウディン大学が、ヘッジファンドに対して最も高いエクスポージャーを持っています。同時に、MITとミシガン大学は、ヘッジファンドに関して最小の相対的エクスポージャーであり、これは年次報告書にも反映されています。 [5]
  • ペンシルバニア大学は、プライベートエクイティや不動産への割当が最も低くなっており、株式への割当が最も高くなっています。

パフォーマンスのトラッキング

下のチャートでは、各大学基金のポートフォリオの累積パフォーマンス(青)と再構築された動的な「スタイル」あるいは一般的なインデックスから構成されたベータトラッキングポートフォリオ(黄)を示しました。

Endowment_tracking

スタイルが累積パフォーマンスを追跡する高い程度から、この定量的な研究は、ブリンソン(共著)の研究論文にあるように、資産配分の程度と変動性の両方において大学基金のリターンの動きの主要な部分を説明することを裏付けています。私達の研究対象の大学基金の殆どにおいて、分析結果は予測される決定係数80-90%の値を示しています。予測される決定係数とは、MPIが知的所有権を持つ、当該モデルによる未知のリターンを予測する能力の測定です。これらの顕著に高い値は、私達の分析が単なる過去のデータフィッティングではない、強力な予測力を持つことを示しています。

パフォーマンスの要因

Endowment_attrib

各大学基金のパフォーマンスは、10年間のダイナミックファクターエクスポージャーによって、概ねよく説明されています(決定係数90-95%)。上の要因分析チャートは、FY2015のパフォーマンスを私達の分析で用いられた各ファクターに起因する各コンポーネントに分解し、説明不能な回帰の部分をここでは「セレクション」と呼んでいます:

  • FY2015における株式市場のパフォーマンスの見通しが暗いため、結果として未公開株式や不動産への割当が大部分を占めています。昨会計年度、ベンチャーキャピタルへのエクスポージャーが主要な4校、イェール大学 [6]、プリンストン大学、MITそしてボウディン大学ーにおいてリターンの殆どに貢献しました。そのうちボウディン大学において、ベンチャーキャピタルへのエクスポージャーへの貢献が最も高くみられました。
  • セレクションリターン(灰色)、しばしば「アルファ」と呼ばれるモデルで説明されない残差リターンは、2015年では、多くの大学基金でプラスでした。大学基金のポートフォリオにおいては、リターンのこの部分はトップファンドへのアプローチ、ポートフォリオの集中化、あるいは卓越した証券の銘柄選択効果によるものかもしれません。ここでは最小規模の大学基金であるボウディン大学が、2015年の資産別による測定で、最も高いセレクションのリターンの部分を持つことは注目に値します。
  • FY2015において驚くに値しなかったのは、コモディティーへのエクスポージャーは例外なくマイナスのインパクトがあったことです。

私達の研究は、過去10年間においてパフォーマンスの最も高い大学基金の結果が、未公開株式や不動産、およびヘッジファンドへの大きな投資によって説明できることを確認しました。また、ペンシルバニア大学のような、より伝統的なエクスポージャーから、ボウディン大学の例のような代替資産へのより積極的なエクスポージャーのレベルまで相当の配分のばらつきを確認しました。ただし、より短期間でみると、直近の会計年度においてボウディン大学、プリンストン大学、そしてMITは、他校に比べて大幅なセレクションリターンの上昇が見られます。

MPIのDSAのような先進の定量的なテクニックによって、リターンのデータが低頻度であっても意味のある知見が得られること、そしてそれがアナリストや投資家にパフォーマンスとまばらなポジションのディスクロージャーを両立する方法を提供することが分かります。MPIは今後もこれら及びその他の理解しにくい投資を調査し、パフォーマンスを駆動する要因に関する知見を提供してまいります。

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  1. 6月30日に終了する会計年度、大学基金が選択した報告の期間。 []
  2. 10データポイントしかないため、ファクターの数は小さくなります。この分析のために選ばれたファクターは、全てのポートフォリオにわたって良いハイレベルな資産ベースの知見を提供すると感じられたものです。 []
  3. MPIとEurekahedgeが共同で開発したユーリカヘッジ50インデックス(EH50)は、ヘッジファンド業界で通常言及されるヘッジファンドユニバースよりもより集中化したヘッジファンドの指標です。幅広く分散化され、かつ戦略やパフォーマンスに関してバイアスのかかった他のヘッジファンドの指標と違って、EH50は資産規模の大きい、機関レベルのヘッジファンドから構成されています。そのため、トップクラスのヘッジファンドへのアクセスを持つ大学基金のプログラムにとってより適切なベンチマークとなっています。今回の研究で、私達はEH50の設定来2007年から遡り2004-2006年分を試算し、インデックスを拡張しました。 []
  4. 免責事項:この研究で用いられた各インデックスは一定の相関関係があるため、エクスポージャーはある資産クラスから別の資産クラスに「移動する」ことが予想されます(例:株式や債券はヘッジファンドへのエクスポージャーに食い込む可能性があります。)加えて、大学基金の投資は全てを内包する全般的なインデックスの小さなサブセットの構成部分にとどまる場合があります。そして私達が検知した多くが年次報告書のレビューに裏付けられる一方、そのような情報へのアクセスを私達が持たないため、私達の結果が大学基金の実際のポジションを完全に反映しているものではありません。私達はアナリストが直面する非常に限られたデータセットと公表された戦略とポートフォリオのパフォーマンスを一致させる必要で想定されるデューデリジェンスの方法に従って行いました。 []
  5. 彼らの年次報告書によると、ここに記載された他の大学基金と比べ彼らの配分は半分から3分の1で、ヘッジファンドに最も多く配分されています。 []
  6. イェール大学のCIOデービッド・スウェンセンはニューヨークタイムズで、FY2015はイェール大学のポートフォリオ内において「ベンチャーキャピタルに関して素晴らしい年だった」と語っています。 []